改過自新

2011 年 5 月 26 日

 欧州チャンピオンズリーグ(CL)におけるイタリアの出場枠が4から3に削られた背景には衰退して行くカルチョの実情がある。
 世界中がイタリアを恐れた時代は過去のものになりつつある。
 今季CLでインテル、ミラン、ローマを大会から追い遣ったのは台頭して来た若き才能達である。
 その事実に、イタリア人自身も気付いていて愛するクラブが行う補強に異議を唱え始めている。
 先日、ACミランのアンドレア・ピルロがユヴェントスに移籍した。
 ロベルト・バッジョ本人に「後継者」と名指しされ、カルロ・アンチェロッティに見出された希代の天才MFがユヴェントスに入団してもユベンティーノの反応は冷やかなものだった。

 『もっと若い才能を』と。

 ピルロが10年在籍したACミランでの思い出を語った記事が目を惹いた。
 「素晴らしい思い出」の1つに自身が初めてCLを制した(2003年のユヴェントス戦)時の事を挙げ、「最悪の瞬間」はイスタンブールで敗れた時の事を挙げている。そして『今もどうして試合を手離したのか理解できない』と続けている。
 ピルロ自身が体験した天国と地獄はCL決勝での出来事であり、一発勝負の戦いでもある。
 今週末、CL決勝がサッカーの聖地ウェンブリー・スタジアムで行われる。決勝チケットの値段の高騰はCL人気の高さと比例する。
 多くの日本人がCLは毎試合の様に『観る』と答えても、頭に「A」が付くと『観ない』と答える。
 『殆ど観ない』と答える方の中に「ヘタ」「面白くない」といった事を挙げる。

 「CLは観るが、ACLは観ない」これが実情だろう。

 面白くないのは興奮が欠落しているからだと私は考えている。
 CLは決勝戦以外、グループリーグ予選からホーム・アンド・アウェー(H&A)で大会は進められる。ベスト16に入るとノックアウト方式が始まり各チームは「アウェーで引き分け、ホームで勝つ」を常套手段に用い、両者アウェーゴールを積極果敢に狙う。
 ホームでの戦いはファンの声援が1つの、そして大きな武器になる。チームを助ける声援を贈り、例えアウェーで負けてもホームで勝てれば、と信じ、試合のホイッスルが鳴り響くまで声援を贈り続ける事を止めない。この興奮こそが大会を大いに盛り上げている、と言っても過言ではないだろう。
 この興奮がACLにはない。

 CLは決勝が行われる舞台は大会前に決まっていて、決勝戦が行われるスタジアムに選ばれたクラブはクラブの威信を懸けて大会に望む。UEFAが定めた基準をクリアしたスタジアムが大会前に決まる。故にクラブの威信を懸ける。いや、懸けられると言ってもいいだろう。
 この威信がACLにはない。

 ACLの大会レギュレーションは2002-03年大会はグループリーグは4チームずつ4組(東アジア・西アジア2組ずつ)に分かれ、セントラル方式で行われ、各組1位のチームが決勝トーナメントへ進出。
 決勝トーナメントは4チームによるH&A方式で行われていた。
 2004年大会から2008年大会まで28チームを東部と西部に分けてグループリーグを実施。東部地区(東アジア・東南アジア地域)では12チームを3グループに、西部地区(中央アジア・西アジア・中東地域)では16チームを4グループにそれぞれ抽選によって振り分けた。それぞれのグループでH&Aによる総当たり戦を行い、各組1位が決勝トーナメントへ進出。
決勝トーナメントでは、各組1位の7チームに前回の優勝チームを加え、決勝まで一貫してH&Aでのトーナメント方式で行われていた。
 少しづつ改善されている。
 そして日本勢が連覇を果たした翌年からレギュレーションが変わる。
 2009年大会よりグループリーグ各組上位2チームの計16チームが決勝トーナメントに進出し、決勝トーナメント1回戦(ベスト16)はグループリーグ各組1位チームのホームでの一発勝負、準々決勝から東西を混合して行う。準々決勝と準決勝は2008年大会通りH&A方式で決勝は中立地での一発勝負とされている。
 このレギュレーションでは盛り上がりに欠けるには言うまでもないだろう。
 以前の様に決勝トーナメントからH&A方式を持ちいれば、アジア全体の経験の糧にもなり、各国代表チームにも反映されるのは言うまでもないだろう。アジアが如何に広大であっても、相手も同じ条件で戦うのだから文句も言えない。
 アジアの中にはリーグ戦を中断してまでもACLを獲りに来ている国もある。
 アジアのクラブチームにとっては最も権威のある大会であり、本大会に優勝したクラブには150万USドルの賞金が贈られると同時に、同年度の12月に開催されるFIFAクラブワールドカップへの出場権が与えられるのだから、Jリーグ全体がもっと真剣に獲りにいってもいい。
 サッカーを愛する日本人が聞きたいのは負け惜しみや言い訳ではなく、勝利なのだと思う。世界が注目する大会と同時に世界を体感出来る大会に顔を出さずして、更なる発展など有り得ないだろう。
 ピルロが一発勝負で得た経験は何ものにも変え難い。しかし、一発勝負までの過程があった上での経験である。
 ACLがCLに追い付くには時間が必要である。
 しかし、Jリーグ勢はそのACLにおいて昨今は毎年の様にベスト16で敗退している。
 Jリーグが本気で世界に追い付きたいのならACLをもっと重要視しなければならない。
 日本人嫌いが多いアウェーで相手の猛攻を耐える能力、ブーイングや不可解なレフリングに耐える精神力、試合を「0」で抑える集中力、したたかに「1点」を狙う狡猾さが未来に繋がる。
 柔道を始め、日本が頂点に立つと世界は日本に対し、明らかな冷たい裁きを下す。
 とかく日本人は世界から「一発勝負に弱い」と見られている。
 「逆境に強い日本人」と云われるが実は脆い様に映る。

 短所を補う術は言うまでもなく経験あるのみである。

 ACLにおいて、忘れられない光景がある。
 浦和レッズがアジア制覇を決めるPK戦で相手選手がペナルティスポットにボールをセットした時に起きた奇声やブーイングを、そして乱暴に振られた旗を、そして勝敗が決した時の歓喜を。お荷物からアジアの頂点に立った時の興奮は現在も色濃い。
 翌年にはガンバ大阪がアジア制覇を成し遂げる。
 以後、日本からアジア王者が誕生していない。

 FIFAクラブワールドカップに開催国枠で出場するのとACLを勝ち獲って出場するのとでは価値が全く異なる。

 宮市亮の様にJリーグを経由せず、欧州で才能を開花させるモデルケースが出始めた現在、FIFAクラブワールドカップ経由海外行きのモデルケースを見たい。
 その事実がまた日本を次のステージに導くと私は考えている。

 日本勢で唯一ベスト8に残ったセレッソ大阪の躍進に期待したい。


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