鐘の声

2011 年 5 月 17 日

 平家物語の「祇園精舎の鐘の声」で始まる冒頭は多くの日本人に愛されている。
 1000年近くたった現代でも同じ様に世の多くの出来事に当て嵌まる。

 東京ヴェルディがヴェルディ川崎と呼ばれていた時代、憎たらしい位に強かった。
 他チームを応援していた自分にとってヴェルディは常に強き者であり強固な守備とラモス瑠偉の構成力、カズの決定力、何故か“そこ”にいて得点を重ねる武田修宏がとてつもなく憎かった。強いヴェルディがいて、時代も手伝い、人気も絶大であった。

 「盛者必衰の理をあらわす」に続く文面から衰退していく平家の様が読み取る事が出来る。

 当時のヴェルディは日本代表選手が多く、各ポジションにタレントを擁し、他を圧倒する強いヴェルディを率いていたのは松木安太郎氏であった。
 現在、解説者として賛否両論あるが人気があり、お茶の間を賑わしている。
 その松木氏の隣の席に座っていたコーチこそ強いヴェルディの名参謀として紹介されていた。

 期待しても、期待にそぐわない結果がある。

 1995年、その名参謀が日本代表監督候補にリストアップされた時に抱いた「強いヴェルディ=強い日本代表」を誰もが期待した。
 サイン直前で加茂周氏の日本代表監督続投が決定。続投の経緯に腹を立てたネルシーニョはサッカー協会幹部を『腐ったみかん』と痛烈批判。『腐ったみかん』の発言が世論を賑わせた直後にブラジルに帰国。2年後の1997年トヨタカップでクルゼイロを率い凱旋帰国している。
 その後2003年~2005年、名古屋グランパスの監督に就任するが成績不振で解任されている。
 2009年7月ネルシーニョは柏レイソルの監督に就任、2010年J2を制覇、2011年J1で首位を走っている。
 開幕戦を観戦させて頂いたのだが、選手がよく走る印象を受けた。
 開幕前、期待された清水エスパルスに殆どペースを握らす事なく完勝したこの試合。知っている選手に対しては『この選手、こんなに走れたっけ』と思う位に走っていた。ベテランと若手、ブラジル人選手が融合したチームは観ていて楽しい。現在、6戦5勝1敗と強かった頃のヴェルディを彷彿させるとは言い難いが、とにかく強い、その一言に尽きる。
 今後もレイソルの動向を注意深く追いたいと思う。

 ネルシーニョが去ったが故にヴェルディが衰退の一途を辿った、それも一つ。
 チームスポーツとは生き物であり、円滑な血の循環を怠れば血は腐る、それも一つ。
 全てが正解であり、そして少しずつ違っている。十人十色の意見があり、論議するのもスポーツの楽しさの一つだと私は考えている。
 ヴェルディ川崎から現在の東京ヴェルディと名を変えるまでにスポンサー撤退などの困難に見舞われるが、心温かいファンによる署名活動があったり、チームの根本を現在も支えている。黄金期のチームを応援していたファンは、徐々に衰退していくチームに愛想を尽かし、違うチームに乗り換えていく中、チームを見捨てずに支えているファン達がいる。
 残された真のファン達は低迷が続いてもチームを愛し、応援し続け、そして支えた。ファンの存在なくして現在のヴェルディは有り得ない。
 証拠に先日行われたFC東京との「東京ダービー」はスタジアムは異様な空気を醸し出していた。心の爆発と言っても過言ではない怒号が、声援が、そして旗がスタジアムを包んでいた。
 皮肉とユーモアを交えた応援がユース世代から続く「犬猿の仲」の両者を燃え上がらせた。
 3年ぶりに公式戦で相見え、J2ながら3万人近い観客を集めている。

 この事実もまたサッカーの持つ力なのだと私は思う。

 世界の如何なるチームも現在の強さが未来永劫続くという確証はない。が、しかし柏レイソルが歩んでいる2011年は現在のところ間違ってはいない。


コメントをどうぞ