救世済民

2011 年 4 月 25 日

 お誂え向きな(あつらえ)試合という試合ある。
 そして、祈りを捧げる試合というものがある。

 ファンでなくともサッカーをテレビ観戦したのなら5対4、もしくは3対2の試合を是非観たいし、自身が応援しているチームならば勝利を誰もが望む。
 大震災で中断されたJリーグが23日、24日に再開された。
 等々力陸上競技場に反響したカントリー・ロードの音色は誰の胸にも刺さったのではなかろうか。
 試合は川崎が先制点するものの仙台が同点とし、後半終了間際に逆転に成功、2-1で激戦を制す。
 川崎サポーターには気の毒な結果だが、日本中が期待し、理想の試合展開で劇的勝利を日本中に届けた。
 被災地に勇気や希望を届けたのは勿論だが、諦めては何事も成し得ない。という事を多くのサッカーファンのみならず、サッカーに無関心な日本人にも教えられた事と思う。
 再開されたJリーグは昨シーズンの最終順位など、何の参考にもならない試合が目を惹いた。
 リーグ最終順位1位から3位、天皇杯覇者に与えられるアジアチャンピオンズリーグ(ACL)出場権を獲得した各チームが軒並み低調なパフォーマンスで再開された第2節を終えた。
 王者名古屋は浦和に0-3、ガンバは広島に1-4、セレッソは山形に0-0のスコアレスドロー、鹿島は0-3と完敗している。
 ACLとの過密日程はあるものの、負け方が気になった。
 名古屋は前節、終盤に出場しチームを救う活躍をした期待のルーキーFW永井謙佑に期待が掛かったが浦和の若きDF高橋峻希に完璧に抑え込まれてしまう。昨シーズンバラバラに見えたチームも今季は選手のスピードを生かした縦に早い攻撃を軸にチームを建て直しに成功、マルシオリシャルデス、田中達也の得点は今季浦和の典型と呼べそうだ。よく組織された浦和守備にリズムが掴めない名古屋。柏木陽介の隙を突いたスルーパスから2点目も献上してしまう。その後、DFのモタつきを見逃さなかった原口元気が追加点。王者らしからぬ試合を演じてしまった。
 ガンバはリーグ戦で10年間負け知らずの“お得意様”広島に終盤、一矢報いたが敗れてしまう。セレッソは決めれるチャンスに決めきれずにスコアレスドローを演じ、鹿島はキャプテン小笠原満男のスパイクに「東北人魂」の刺繍で話題をさらったが、攻守にチグハグなチームはキャプテンと10人の間に僅かな温度差を感じた。競り合いで尽く体を投げ出す小笠原満男と、競り合いで尽く足でプレーしようとする他の選手達。キャプテンとして選手達を背中で引っ張るプレーをしながらも、選手達はそれについていけてない。試合を観ながら、そんな温度差を感じてしまう。
 ACLに出場している4チームの救いは「アウェイで行われた」という事。
 これからいくらでも建て直す事が可能であり、建て直していく過程も見逃せない。

 鹿島はホームスタジアムであるカシマサッカースタジアムが被災した為、国立競技場を使用した。
 カシマサッカースタジアムが現在、安全面でどのくらい安全かは知る由もない。だが茨城に居を構え、鹿島よりも小さな水戸ホーリーホックは被災した部分にサポーターを入れずホームスタジアムであるケーズデンキスタジアム水戸で試合を行った。
 試合は後半ロスタイムに得点し逆転勝利、試合をヒックリ返した。
 12000人収容のスタジアムながら1273人集まった。ホームスタジアムで逆転勝利は此の上無い「活力」になると私は考える。カシマサッカースタジアムで同じ事が出来ないのだろうか。
 公式記録を調べると40728人収容とある。半分でも20364人が入場出来る。
 23日に行われた試合は15688人の入場者があり、当然だがその数の中に横浜サポーターも含まれている。行きたくても行けなかった鹿島サポーターも勿論いる。ホームで行えば多くの鹿島サポーターそして鹿嶋市民が、茨城県民が「我が町の我がクラブ」を観戦する事が出来る。そこから生まれるものは想像を絶するものだと私は考える。
 そもそもJリーグが掲げる地域密着とはこういった“もの”を指すのではないか。
 だからこそ問いたい。

 カシマサッカースタジアムは全く使えないのだろうか。

 不謹慎な言い方を許して貰えるのなら、今回の大震災を機に古き良き日本人が持っていたであろう団結や結束、思いやりを、そして絆を再び呼び起こした事と思う。
 あの日、等々力陸上競技場で見た結束。そして祈り。
 黄色のユニフォーム、黄色のカッパに身を包んだサポーター達は誰に指図される事も無く、皆が手を繋いでいた。

 繋いだその手を、決して放してはいけない。


コメントをどうぞ