悲壮感

2011 年 4 月 20 日

 忌わしい3月11日以降、初の関東圏での公式戦。
 鹿島は国立競技場で水原(韓国)と対戦、1-1で引き分けた。
 鹿島は試合序盤から小笠原満男を中心に攻勢を仕掛ける、中盤でタメを作り両サイドバック新井場徹、アレックスの上がりからチャンスを演出する。水原も守備を固め拮抗した前半戦を終える。後半に入ると試合が動く、3分に直接FKを入れられると国立競技場は静寂に包まれる。
 後半が始まったばかりなのだがスタジアムは失望感が満ち溢れてしまう。直後に田代有三がロングボールに抜け出し、GKと1対1になりスタジアムを再び沸かせるが決めきれない。このプレーで田代は怪我を負ってしまう。
 9分に野沢拓也のFKを遠藤康が折り返し、田代が決め同点とする。大きな弧を描き、遠藤が田代の足元に丁寧に預け、田代は決めるだけでよい、そんな同点ゴールであった。
 直後のプレーで田代は負傷交代してしまうのだが、この交代が鹿島にとっては痛かった様に映った。前線ターゲットを失った鹿島は起点がなくなり、水原DFラインを楽にさせてしまう。
 試合勘が戻らない鹿島は“ここぞ”という場面でミスを連発する。サッカーにおいてミスは付き物だが、目を疑うようなミスや、チームの大黒柱ともいえる選手達が凡ミスをしていてはチームは乗れない。結局、試合は1-1で試合を終える。
 素晴らしいパスワークからの決められたチャンスは十分あったが決めるべき局面で確実に決める、かつての常勝鹿島を早く見たい。

 同日、アウェイで行われた前シーズン日韓王者対決は正に名古屋の会心の勝利であった。終始安定した試合運び、危険な場面で体を投げ出し前半1点、後半1点の完勝ゲームに日本サッカーの力強ささえ感じた。
 金崎夢生、永井謙佑といった若い選手が得点を決めた訳だが、2点共諦めていたら得点は入ってはいなかった。小川佳純のシュートにGKのファンブルに体を投げ出しての金崎の1点目。相手DFのバックパスを狙い、狙い通りの展開から奪った永井の2点目。
 名古屋は鹿島に比べれば、美しくもなく、所謂「泥臭いゴール」であった。しかし試合に勝利したのは名古屋である。

 国立競技場で小笠原は躍動した。殆どの場面に顔を出し、競り勝ち、長い距離を走り、長距離のロングボールで相手の急所を突き続けた。昔から無表情で疲れをあまり表に出さない選手なのだが、悲壮感溢れるプレーは目を惹いた。
 この試合、後半から投入された遠藤康に私は密かな期待を抱いていた。昨シーズン、重要な試合で得点を決める勝負強さなど期待を抱くのに十分な要素があった。
 今回、被災した宮城県で生まれ育ち、小幡忠義の勧誘を受け塩釜FCジュニアユースに入団し頭角を現し、小柄ながらも確かな技術を感じさせるプレースタイルに幼少期にU-18東北選抜チームでチームメイトでもありドイツでブレイクした香川真司を思わせる遠藤康に期待していた。
 しかし、同点ゴールを演出したアシストだけで目立った活躍が出来無かった。判断の遅さから囲まれ、クロスを上げられるシーンを逸してしまったりCKを選択出来た局面で上げられなかったり体を張ったプレーが感じられなかった。同じ被災者でありプレーで90分チームを背中で引っ張った小笠原とは確かな差があった。泥臭くも得点を挙げた金崎、永井、そして香川との差は広がっていく一方である。

 本日もACLが開催されG大阪、C大阪の2チームがアウェーで試合をする。
 泥臭くとも、勝利を挙げて欲しい。


 3月12日、13日に行われる予定だった試合が今週末、行われる。
 つまりは満を持してJリーグが再開される。

 昼間開催だが、時間が有る方は是非スタジアムまで足を運んで欲しい。昨日の国立競技場の入場者数は4619人と、かなり少ない観客数だが平日の昼間開催では立派な数字である。
 田代の同点ゴールでスタジアムは沸いた。何でもないゴールであそこまでサポーターが歓喜した。それが同点ゴールだったからかは知る由はない。
 3月10日以前には当たり前だった日常の少しの、ほんの少しの日常を取り戻す事こそ復興なのだと私は考える。
 3月11日の大震災でJリーグの各チームは募金活動や支援活動を行った。

 そのチームを支えていくのもサッカーを愛する人間たちの仕事でもある。
 そしてゴールが決まった瞬間をスタジアムで感じて欲しい。

 今までとは違った歓喜があり、光がある。
 少なくとも私はそう思う。


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