指針

2011 年 2 月 18 日

Jリーグの試合開始前、電光掲示板に外国人の名前があれば誰もが日本人以上のパフォーマンスを求めてしまう。
珍しい事ではないし、言ってみれば当たり前の事実である。

会社にも外注社員と呼ばれる社員がいる様に社員がこなせない難しい仕事をこなしたり、社員が足りない部分を補ったり、と会社により様々な用途があると思う。
唯一の共通点は「=戦力」でなければならないし、この「イコール」こそが、外からやって来た者に対して求められている必須能力である。

長友佑都がリーグ初先発を果たし、岡崎慎司がヨーロッパのデビューがドイツではなく、いきなりポルトガルであった。
期待の表れであると同時に岡崎自身にとっても、大きな財産となった事に思う。
岡崎のデビュー戦は前半15分にドリブル突破からカットインし、惜しいシュートを放つなど、まずまずの存在感を示す。
その後は“らしい”プレーが続く。時に潰れ役、汚れ役になり労を惜しまない動きにはチームメイトにも指揮官からも一定の評価を得られた事と思う。
試合序盤、ツートップの一角であったが徐々に左MFに近いポジションとなり、チームが右からの攻撃の際、ファーサイドで待つ岡崎にクロスを送っていれば面白いシーンも多々あった。チームメイトがこれから岡崎の個性が分かり始めれば面白い存在になる事であろう。
その時、大切なのは呼び込む動きにある。手を上げてもボールが来ないのが分かったのなら、出さざるを得ないシーンを自らが作れば良い。
出さざるを得ないシーンを岡崎が今後作る事が出来たのなら、と期待してしまう。
気掛かりなのは恐ろしく脆い守備組織の中、岡崎にボールが回ってくるか、だけに思う。
自国リーグも降格圏を彷徨うチーム状態だけにチームの救世主になれるか否か、今後が楽しみである。

イタリアでは長友が初先発を果たし、イタリアでも日本でも賛否両論ではあるが、私はもっとやれたと考えている。インテルの先制点は長友が関与したと言っても過言ではないだろうが、その後、残念なのは長友がボールを持った時にチームメイトのサポートが得られなかった事。欲しい場所を要求されもしなければ、チームメイトは傍観者になっていた気がする。
そんな中、前半40分にはシュートを放っている。
このシーンをより多く見たい。エトーのスピードとパッツィーニの巧みさにフィオレンティーナDF陣のみならずイタリア中が警戒している。ならば、カットインし利き足でシュートを打っても良いし、打たずにバイタルエリアの中央に構える事の多いスナイデルに預けたりなどしたら、インテルの攻撃の幅が広がる気がしてならない。
その広がりこそが長友の存在意義だと私は考える。
この日、縦へのドリブルが多かった。それだけに「中へ」のバリエーションを付け加えたのなら、キブにもサネッティにもない武器が備わると思うし、スプリント能力だけならチーム上位である長友、ならば長所を生かした攻撃がもっと見たい。
しかし、展開力の欠如は深刻である。
どうしてもバックパスが多い。ボールを持った時にコルドバに戻す事が多かったが、一つ遠いラノッキアに飛ばす事も出来た筈。
何の為のバックパスか、課題は多い。

イタリア全国紙は長友のプレーを「東京駅から出発する正確な電車」と描写し「問題は到着した際に何をすべきか分かっていないこと」と評した。
つまりは能力は足りているが、プレーにメッセージ性が感じられない選手という評価なのだろう。
ヨーロッパの舞台で毎試合の度に喝采を浴びる働きをするのは容易ではない。
だが、長友にしても岡崎にしてもヨーロッパに選手として戦いの舞台を移したのだから、その常を全うして欲しい。
その常を全うしてこその欧州挑戦であると思うし、その挑戦こそが後に続く者達への指針になる。

外注社員にしても戦力として会社に招かれた訳なのだから、ゴールを目指し、逆算し、瞬時に、何をすべきか明確に理解している者だけが認められるべきである。

何の世界でも能力の指針はしっかりと、正しい方向を向いていなければならない。


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