第89回全国高等学校サッカー選手権大会

2011 年 1 月 10 日

是程、自然に微笑んでしまったのは何年振りだろうか。

4185校の頂点を決める戦い。
高校生の夢舞台、国立競技場で行われた第89回全国高等学校サッカー選手権大会の決勝戦。
悲願の国立初勝利を挙げ樋口、浜口を中心に爆発的な得点力で初勝利を目論む兵庫県代表 滝川第二高校。
頑なにショートパスに拘り「全国の公立校に夢を与えたい」と初勝利に意気込む京都府代表 久御山高校。
前半序盤は久御山が流れを掴むが、毎試合高い順応性をみせる滝川第二が徐々に好機を作り出していく。
サイドチェンジの折り返しに浜口が粘り、先制点を決める1-0。
久御山は準決勝まで見られなかった小さなミスが目立つ、流れを掴みかけている時にコントロールミスをしていては流れは掴めない。気になったのは足元、足元で試合を作るのを信条に掲げるチームにこの試合ロングパスが目立った事。手数をかけてゴール前に運んでいたチームが、この試合に限って縦パスが多い。そんなミスから2点目を失う。
『やりたい事をやって負けるのなら本望』と久御山イレブンは口を揃えていたが手数をかけず味方を追い越し、シンプルにボールを運ぶ滝川第二が2-0で前半を折り返す。
自分達のやってきた形、信じてきた形での後半巻き返しに期待したのだが、夏のインターハイファイナリストでもある試合巧者の滝川第二は流れを簡単には渡さない。ボールホルダーに対し、チェックせずにコースだけを切る、もたついている間に奪いに行く選手を待つ。8分に3-0とし試合をほぼ手中に収める。
その直後、久御山イレブンは円陣を組む。久御山応援団以外の方も期待が膨らんだ事と思う、その直後に1点を返す3-1。
まだまだ勝負の行方が分からない状態で浜口が抜け出し4-1に突き放す。
『インターハイ決勝で先制した後、どこかで守りに入っていた。だから選手権では攻めて攻めて攻め続けたい』と滝川第二イレブンは口を揃えて言う。油断は一欠片も無い。
ボールを回させ、危険な場面を作らせない守備。
試合終盤、魂を感じさせる久御山の追い上げで国立を沸かせる。4-2、4-3。
「いける」と頭をよぎり始めた久御山にトドメを刺したのは、やはりエースの樋口であった。
単独得点王に輝く8点目を叩き込み、1月の気温を感じさせない得点以上に白熱した5-3の決勝戦は幕を下ろす。

滝川第二は、各個人の卓越した個人技、試合の流れが作れ読める両ボランチ、集中力の切れない選手達、超強力ツートップ、過去に大舞台で負けた事によって培われたチーム力。日本代表として活躍する岡崎慎司以来のFWキャプテンとして個性派軍団を纏め上げ、自宅通学から寮に入ってチームに結束をもたらしたキャプテン浜口。勝つべくして勝ったチームだったのかも知れない。
敗れた久御山も素晴らしかった。世界のトレンドであるバルセロナを目指し、ポリシーを曲げず、昨年年間1敗しかしていなかった高体連最強の呼び声高かった流経高を破り、初の決勝まで辿り着く。決勝ロスタイムでもパワープレーをしない姿勢に「ぶれないスタイル」を最後まで貫き、美しく散った。
松本悟監督が語った「全国の公立校に夢を与えたい」という夢も十二分に与えたのではないか。試合後の久御山の選手達を見ると清々しく笑っていた。
目指したバルセロナのレジェンドが『1-0で守り切って勝つより、4-5で攻め切って負ける方が良い』を信条にサッカー人生を楽しんでいた。最後まで諦めず「キミは君らしく」のスローガンに恥じない毎試合であった。

閑散となった国立競技場で表彰式を終えた滝川第二選手達が相手応援スタンドに挨拶をし、母校の応援スタンドの前で高校生らしくはしゃぐ。
相手応援席に挨拶をしに向かう久御山。
勝者と敗者が試合後対峙する気まずい空気が漂う場面ではあるが、両者が抱き合い、腕を挙げ『オイッ!オイッ!オイッ!・・・』と楽しく声を掛け合い試合後の余韻を心から楽しんでいた。
涙が出てきた。
サッカーの、スポーツの持つ力なのだとは思うのだが、例え自宅の隣人でも挨拶を交わさない程に人間関係が希薄になった昨今。
この高校生達を見習って頂きたい。
滝川第二高校の悲願の初優勝を心より祝福したい。
素晴らしい第89回高等学校サッカー選手権大会であった。


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