「志」~十一人の心

2011 年 1 月 8 日

両チーム共に得点王を狙える選手がいて、4試合12得点6失点の島根県代表 立正大淞南高校、相対する兵庫県代表 滝川第二高校は4試合15得点2失点という成績。
攻撃的な両校だっただけに打ち合いに期待していた。

10樋口寛規11浜口孝太の二人を軸にダブルブルドーザーと呼ばれ、圧倒的な攻撃力で勝ち進んで来た滝川第二高校。
10樋口6得点11浜口5得点、二人で11得点というダブルブルドーザーの名に恥じない両選手なのだが、この日はダブルブルドーザーの運転は休業だった様に見えた。
これまでの滝川第二は10樋口か11浜口にボールを預け、サイドに展開し、質の高いクロスが持ち味の攻撃。
両者共、上背は無いが体幹の強さが伺えるキープ力と優れたジャンプ力があり、ポジションに拘らず縦横無尽に走り回り、力強いドリブルで得点を量産して来た。
しかし、この日のダブルブルドーザーは前線に張り付いているだけで「落ちてくる」動きが少ない。
故に両者が孤立する場面が続き攻撃を停滞させていた。
ブルドーザーは栫監督が命名したそうだが、怪我の影響か、動きに精彩を欠いていた。
これまで簡単にボールを失ったりするシーンは見受けられなかったが、この日は簡単に失ったり、ブルドーザーらしからぬDF陣に押され負けしてしまうシーンも目立つ。
怪我の具合は、チームが考えているより深刻なのだと思う。
第1試合がハイレベルだった為か、チラチラと席を立つ人も目立つ。
立正大淞南の攻撃陣はスピードのある選手が多い。
7得点で得点王を走る17加藤大樹は最たる例の様な選手。
その選手達を巧く使い、10稲葉修土のポジショニングの良さもあり、奪ったボールをシンプルに攻撃陣に預け、効果的に攻撃を繰り返す。厚みは無いが、選手の持ち味を十二分に生かした攻撃に思う。

後半、両校に起点が無く、蹴り合いの続く試合展開ではあったが冷たい1月の風が出始め、影で覆い始めた国立競技場がやっと湧く。
40分、フリーになった14池田拓生のヘディングシュートが外れたのを皮切りに42分には14池田のスルーパスに大会得点王17加藤が抜け出す。
キーパーをかわし、誰もが溜まった鬱憤を爆発する瞬間がやって来る。
しかし、喜んだのはスタジアムで観戦していたお客さんではなく、立正大淞南応援団でもなく、滝川第二高応援団であった。
後になって録画VTRで知ることになるのだが、『100人中100人決まったと思ったことでしょう』と実況していた。

テレビ中継は途切れ、国立競技場に最後まで残った者しか知り得ない記憶に色濃く残るであろうPK戦を制し、滝川第二高が選手権初の決勝戦に望む。
記憶にない島根県の飛躍を目撃した者は歴史の証人になるのかも知れない。
毎試合、前後半始まる際に応援スタンドに向けて行う挨拶、疾風怒濤の攻撃。
私は89回大会の島根県代表を忘れないだろう。

迎える決勝戦、満身創痍の10樋口の未来を思うのならば決勝戦は途中交代でも良いのでは、と思ってしまう。
滝川第二の応援スタンドには毎試合「志」と書いた旗がある。
拝見させて頂いたが「志」の文字のまわりに選手達の目標が書いてある。
滝川第二高では「十一人の心」と読むそうだ。
「決勝戦でサッカー人生を終えても構わない」というなら何も言わない。
尊重する「心」もあれば、選手の未来を想う「心」もあって良い様に思う。
あの才能を高校サッカーの決勝戦で失うのは余りに惜しい気がしてならない。

古くは羽中田昌氏、石塚啓次氏以来の選手交代でどよめく国立競技場、選手権決勝戦を体験してみたい。
得点王のチャンスがあり、チームの中心選手が途中交代して沸かないスタジアムなど皆無な筈。

どちらが勝っても初優勝の決勝戦。
6年連続で新王者が誕生する決勝戦が今から楽しみである。


コメントをどうぞ