確信

2009 年 7 月 2 日

『フットボールに奇跡なんか存在しない。』
今季UEFAチャンピオンズリーグ決勝後にその言葉を聞いた時、僕は移籍を確信した。

人それぞれに考えや価値観があるように信じているものが必ずある。個人にもあるなら集団にあって当たり前。
人は弱い。何かにすがる。勝った経験。うまくいった経験。あたかも用意された事のように勘違いをしてしまう生き物だと私は思う。

マンチェスター・ユナイテッド
チームが信じているもの。それは『奇跡』だと私は思う。
1958年ミュンヘンの悲劇から10年後の1968年ヨーロッパ制覇。1999年のカンプノウの奇跡。そして昨季のヨーロッパ制覇。過去3回のヨーロッパ制覇を何かに取り憑かれたかの様に英雄的な勝ち方をしてきた。
クリスティアーノ・ロナウド
彼が信じているもの。強く信じているもの。それは『自分の力』だと私は思う。
少年時代の彼は他のプレイヤーとは異なる努力をしてきた。大抵、万国共通少年時代にやる事といえばリフテイング、シュート練習、ドリブル練習、ミニゲーム。サッカーを嫌いにならない様、サッカーをもっと好きになる様に指導者は苦労し努力する。
しかし彼は違った。
チームの練習が終わると自宅近くの100m近い坂道を毎日何本もダッシュしていたそうだ。しかも自発的に行なっていたそうだ。
個人的な意見になってしまうのだが自分の子供時代は走るトレーニングがあるとテレビゲーム、テレビ番組など他の事が気になり『あそこまで走れば終わり』『もう、この時間だからコレ走ったら終わりだな』などとサッカー以外の事を考え、思ったものだ。
彼は島国で育ち、幼少時代から『いつかこの島を出て、ポルトガル本土に行ってヨーロッパでチャンピオンになる。』と本気で考えていたらしい。
時は流れ、2002年17歳でポルトガルの名門スポルティングでプロデビューを果たし、翌年にはマンチェスター・ユナイテッドに移籍。そこから個人タイトルを総ナメにする。
08シーズンの彼はまさに自他ともにチャンピオンとなった。
形は変わったが彼は強き者となった。
昨季のCL優勝後にスペインのレアルマドリーへの移籍が騒がれた時、9割方移籍が決まっていた彼をチームに留めた最大の理由はファーガソンの存在だと言われている。
名将と呼ばれ、父親のように慕ったアレックス・ファーガソン。
何と言って彼をチームに引き留めたかは現在は定かにはなっていないがチャンピオンズリーグ初の連覇をそしてチーム初の連覇を引き合いに出した事は容易に想像がつくし、昨シーズンの脅威的なゴール数を考えれば、今シーズンは怪我の影響があったにせよシーズン折り返しから調子を上げ始めた彼を見ているとシーズン終盤にトップフォームに仕上げれば良い。とまで私は思ってしまう。
それだけに今季チャンピオンズリーグを獲り、歴代初のチーム連覇を成し遂げたかったはずだ。是が非でも。
そんな中迎えた今季チャンピオンズリーグ決勝。序盤こそ形は作れたが先制されたチームは終始バルセロナに攻め込まれた。
試合終了のホイッスル。
完膚無きまでに敗れた。アレックス・ファーガソンをもってしも何もできず、2−0のスコア以上の差を見せつけられた。
人一倍向上心の強い彼だ。きっと思ったはずだ。『もう一度、鍛えなおしてバルセロナに勝つ。』
そして同時に連覇を目標に残ったチーム、今シーズンは度々確執が報じられ指揮官ファーガソンには『勝たしてくれなかった』と。奇跡を起こし、信じ続けたチームにある種の恨みを抱いたと私は思う。
試合を観ていた方なら分かるだろう。誰から見ても、試合序盤の顔の表情と試合終盤の顔は明らかに違っていた。『試合に負けているのだから当たり前』などと言う人がいるのなら試合を観る価値が無い気がしてならない。
サッカーを観ているだけで、選手。人間を観ていない気がしてならない。彼は世界的なスーパースターである前に一人の人間である事を忘れてはならない。
私の眼には、今にも泣き出しそうで誰かに懇願する様に見えた。
忘れられないシーンがある。05/06チャンピオンズリーグ、チーム初のファイナリストとなったアーセナル。キャプテンとしてチームを率いたのはティエリ・アンリの行動は今でも脳裏に焼き付いている。彼はチームが混乱に陥ると何度も監督のアーセン・ヴェンゲルの元に駆け寄り、支持を仰いだ。
今シーズンの彼は何度かキャプテンマークを巻いた事があった。もしティエリ・アンリのようにチームが混乱した時に指揮官に支持を仰ぐ事が出来たら。。違う結果が待っていたかもしれない。
しかしサッカーに、スポーツに『もし』は存在しない。


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