奇跡

2016 年 5 月 30 日

 今シーズンの欧州の戦いが終わった。いささか昔話に聞こえてしまうが、日本代表FW岡崎慎司が所属するレスター・シティが今シーズンのプレミアリーグを制覇した。1884年創設の強豪でも古豪でもなく、悪くいえば平凡なクラブがなし遂げた奇跡に世界中が沸いた。

 そこに日本人がいて、貴重な戦力として名を残したのだから何とも頼もしい話である。マンチェスター・ユナイテッドで日本代表MF香川真司が2012/2013シーズンにプレミアリーグ制覇をなし遂げてはいるが、状況が違いすぎる。

 レスターは、各ポジションに代表クラスの選手たちがいたわけではない。また1992年のプレミアリーグ発足以降、ほとんどが優勝。3位以下になったことのない名門中の名門でもなかった。

 ふり返ると香川がユナイテッドにやって来たシーズンこそ「優勝」が至上命題となっていた年もなかった。サー・アレックス・ファーガソン氏の監督ラストイヤーに加え、前年に同じ街のマンチェスター・シティに優勝を許していた。

 半世紀以上前の1930年代と1960年代に1回ずつ優勝経験をもつシティは、ユナイテッドの「永遠のライバル」とは言ったものの、同じ街に居を構えるだけで実際には雲泥の差があった。

 ところが2007年に外資注入によって、強豪チームに変貌を遂げた。着々とチームを強化し、2011/2012シーズンに44年ぶりにリーグ制覇。しかも最終節に逆転優勝のおまけ付きだった。負けず嫌いのファーガソン氏は当然憤慨した。

 監督ラストイヤーをリーグ制覇で終え、優勝セレモニーの中に日本人がいたことも大きなインパクトになったし、歴史の1ページに名を刻んだはずだ。

 だが、岡崎の優勝は状況が違う。

 開幕前の優勝オッズは5000倍。現地タブロイド紙によると、ネッシーが発見されるのが500倍、宇宙人が発見されるのが1000倍。ロックスター、エルビス・プレスリーが実は生きているオッズが2000倍となっているから、レスター優勝の偉大さが伝わるだろう。

 今シーズンの岡崎のハイライトは、第30節のオーバーヘッドでの得点に尽きる。リーグ終盤、降格圏を脱出したいニューキャッスル相手に叩き込んだ一発は決勝点となり、1-0で逃げ切った。死に物狂いで来る相手を突き放す価値のある得点は、簡単には生まれない。

 その岡崎が日本代表として6月3日に日本のピッチに立つ。

 来月10日からフランスで開催されるEURO2016に出場しない国が来日する。そのため、真剣勝負とは言い難い。だが、日本代表の気概を持って臨んで欲しい。

 それが4月14日に熊本県、大分県を中心に起きた大地震で傷ついた方々にとって励みになるはずだ。すでにDF長友佑都を中心に被災地を訪れている。勝利を懸命に追いかける姿は、多くの方に奮起に繋がるのではないだろうか。


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