忽然

2016 年 4 月 17 日

 近年のサッカー界に、ノッティンガム・フォレストの名前はない。このチームが権勢を誇ったのは、1970年後期から1980年初頭までの数年である。

 1981年より東京で開催された第1回トヨタカップに欧州王者として、来日しているほどの強豪クラブである。1979年と1980年に欧州チャンピオンズカップ(現UCL)を連覇したチームは、やがてサッカー界のトップシーンから忽然(こつぜん)と姿を消してゆく。

 チームがチャンピオンズカップを連覇してから、衰退が始まったころ「ヒルズボロの悲劇」は起きる。1989年、リバプール対ノッティンガム・フォレストで起きた事故は、イギリス史上最悪とよばれるものだ。

 当時あった立見席に収容人数以上のファンが押し寄せた末に倒壊。重軽傷者766人、死者96人を出した大惨事として、現代まで語り継がれている。その日が近づくとイングランド・プレミアリーグでは試合前に犠牲者を偲んで、黙祷が捧げられている。

 今シーズンは、事故が起きた4月15日の前日の14日にヨーロッパリーグ(EL)準々決勝2ndレグのボルシア・ドルトムント戦が行われた。

 この日の試合前には、スタンドにコレオグラフィーで「96」を作り、犠牲者に哀悼の意を表した。1stレグを1-1で終え、優位に立っていたリバプールが前半に1-3とされ、圧倒的な不利になる。しかし、後半に入ると1点を返すが、すぐに1点を返され2戦合計2-4とされてしまう。

 この日のリバプールは何かが違った。怒涛の追い上げをみせ、66分、78分に得点を重ね、アディショナルタイムに突入した91分に勝ち越し点を奪った。日本代表MF香川真司を擁するドルトムントに大逆転勝ちを収め、大会ベスト4に駒を進めた。

 リバプール対ドルトムントの試合の少し前、日本時間14日の21:26、熊本県熊本地方を震源とする最大震度震度6強の大地震が起きた。

 Jリーグは16日、九州に居を構えるアビスパ福岡対アルビレックス新潟とサガン鳥栖対ヴィッセル神戸の2試合は安全面を考慮し、中止とされた。同日に開催されたJリーグの試合では「がんばれ熊本」「がんばれ九州」といった手作りのフラッグが目についた。また、九州出身の選手が涙を流すニュースも報道された。2011.3.11が起こった際も見かけた光景だが、サッカー界にできることがこれからもある。

 リバプールでは60年代からサポーターソングとして、愛されている歌がある。ヒルズボロの悲劇が起こった80年代のイギリスは、失業者が溢れ、暴力が街に闊歩(かっぽ)し、ときに死者を出し、未来のみえない混沌とした時代だったと聞く。

 そのときイギリス全土で「You’ll Never Walk Alone」が歌われたそうだ。

 2011年にも東北地方で歌われ、現在、九州地方に届けたい「君たちは1人じゃない」という歌である。


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