聖人

2016 年 3 月 28 日

 日本時間17日早朝、UCL(欧州チャンピオンズリーグ)ベスト16でバイエルン・ミュンヘン対ユベントスが対戦し、2-2の同点で延長戦に突入。延長後半で2点を追加したバイエルンがベスト8に進出した。

 延長戦が始まるときに事件が起きた。

 試合ではなく、試合を中継するテレビ“内”で起こった。試合を中継したスペイン人アナウンサーは、延長戦開始前に「試合が始まるぞ」とテレビ局のスタッフに「カタラン語」で呼びかけた。

 この一言だけで、スペイン国内は大騒ぎとなる。

 2秒にも満たない短いやりとりだったが、この放送がスペイン全土に放送されていたため、このテレビ局のTwitterに誹謗中傷が投稿され“大炎上”する事態が起こる。見かねた記者がカタラン語で話したことを「なんてことない出来事」と投稿を“フォロー”するが、今度はこの記者のTwitterが炎上してしまう。

 ある記者は「スペインにはカタラン語に憎悪の念を抱く人間がいる」と話すが、この騒動が沈静化するのにはもう少し時間がかかりそうだ。

 日本のメディアで例えるのはむずかしいが、テレビから英語や地方の方言が聞こえたとしてもここまで大騒ぎにはならないはずだ。4つの言語が存在し、内戦のあったスペインの怨嗟(えんさ)の根深さが垣間見えるニュースだろう。

 そのカタラン語を愛し、カタルーニャ州を愛し、カタルーニャ地方における聖人「ジョルディ」の名を自分の息子につけたフットボーラーがいる。

 選手として、監督としてもサッカーというスポーツに革命をもたらし、選手としてバロンドール獲得3回、監督としても現在でもドリームチームと呼ばれるチームを作り上げた。発した言葉は現代でも色あせることなく「ボールは疲れない」といった「名言」は現在でも引用されている。

 24日、オランダが生んだ天才ヨハン・クライフがこの世を去った。享年68歳。

 現役時代、記者に「あなたのような天才に凡人の気持ちがわかるのか」と聞かれ「私はサッカーを始めてから、自分より下手な選手としか接したことがないので、誰よりも彼らのことが分かっている」と答えた天才はもうこの世にはいない。

 現役のラストイヤーを過ごしたフェイエノールトでは、選手をすべて自分で選び、ほぼ選手兼監督で国内2冠の離れ業をなし遂げた孤高の天才だった。

 1970年当時、1対1の勝負が主流だったサッカー界に全員で攻撃と守備を兼任させる戦術を実践させ、オフサイドトラップを考案したのもクライフとも言われている。

 カタラン語を用い、カタルーニャ州のFCバルセロナに金と名誉と知識をもたらし、彼が過ごしたスタジアム「カンプ・ノウ」はクライフの功績を称え「エスタディ・ヨハン・クライフ」と名称が変わるかもしれない。


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