美談

2016 年 1 月 15 日

 どのチームにもサポート役がいる。その能力が高ければ高いほど、チームをより高みに押し上げるものではないだろうか。

 第92回箱根駅伝を圧倒的な強さで青山学院大学が完全優勝を果たした。昨年、チームに史上初の往路優勝をもたらした神野大地は今年も5区を走り、主将として完全優勝の一翼を担った。

 彼をサポートしたのは、箱根駅伝のメンバーから外れた寮長の伊藤弘毅だったという。選手の生活管理から寮の備品管理までを行う伊藤に、神野は「メンバーは僕がまとめる、弘毅は他のメンバーをまとめてくれ」と告げた。

 箱根駅伝メンバー外になり、涙を流した伊藤は「神野が競技なら、自分はバックアップ」と心に決める。ただ、5区22㎞付近の給水係だけは志願する。「僕が水を渡すときは、この1年苦しかっただろうけど笑って受け取って欲しい」と神野に一つだけお願いしたという。大学生活最後の並走、たった20メートルほどの箱根路を2人は笑顔で終えた。

 第94回全国高校サッカー選手権では、福岡県代表・東福岡高校が17年ぶり3度目の優勝を果たした。表彰式の際、トロフィーを抱え泣きじゃくる選手がいた。涙を浮かべる選手は多々いたが、前途の選手ほどの記憶はない。

 その選手はマネージャーだという。当然ピッチには立っていない。それでも苦労を知るピッチに立ったチームメイトから「お前が持てよ」と、トロフィーを渡される。大会期間中、PKストップなど安定した守備で優勝に貢献したGK脇野敦至は「あいつらを日本一のマネージャーにできて良かった」と胸をなでおろしている。

 これらのエピソードはどの出場校にもあるはすだが、スポットライトは勝利者に当たりやすい。だが、サポートに回ったチームメイトに行った善意は、美談として後世まで語り継がれていくはずだ。

 今夏のリオデジャネイロ五輪を目指すU-23日本代表にはA代表のシェフが帯同し、食生活のすべてを管理する。U−23日本代表は2004年、アテネ五輪最終予選の中東遠征の際、原因不明の腹痛に襲われた過去がある。今回の最終予選はセントラル開催ということもあり、帯同が決まった。

 13日、2010,14年AFC(アジアサッカー連盟)U-16選手権を制覇し、2014年U-19選手権準優勝に輝き、近年めざましい成長をつづける北朝鮮に1−0で勝利し、リオデジャネイロに一歩近づいた。

 すべてがシェフのお陰とは言い難いが、その一端は担ったはずだ。16日、19日と最終予選のグループリーグは続き、その先に決勝トーナメントを勝ち抜き3位に入賞すれば、晴れて“リオ”への切符を手にする。

 彼らのサポート役は前途の彼らと違い、仕事をプロとして行う大人たちだがU-23日本代表が勝利者になったとき、美談を耳にしたいものである。


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