吐露

2016 年 1 月 5 日

 正月の風物詩に箱根駅伝がある。箱根路を疾走する外国人選手に贈られるのは、応援であり、賛辞である。テレビ中継やラジオ放送では「日本に来て、納豆が大好きになりました」といった情緒的なコメントが、ファンの心を温める。

 罵声を浴びせる者はいないはずだ。

 沿道で浴びせなくとも、ソーシャルメディアを通じても浴びせる愚者の話は聞いたことがない。過去にもあったかどうか。選手生命に関わる怪我から箱根駅伝を断念し、サポート役にまわった日本人の生徒が外国人選手の身の回りの世話をする出場校もあった。

 すると外国人選手から、サポート役にまわってくれた生徒のためにも、学校のためにも、つたない日本語で「勝ちたい」という言葉が聞かれるようになってきた。拓殖大学の2区を走ったワークナー・デレセ選手の話である。

 超人のようなゴボウ抜きとはいかなかったが、順位を大きく落とすことなく3区へ襷(たすき)をつなぎ、彼にとっての“1年目”の箱根路は終わった。外国人選手のエピソードを知らなくとも、極東の島国へやってくるだけでも大変な苦労は想像にむずかしくない。言語も違えば環境も大きく異なる。実際、今年も日本大学の5区を走ったダニエル・M・キトニー選手は昨年、箱根で生まれて初めて雪を見たという。

 チームを敗退に追いやったからといって、チームを優勝に導けなかったからといって、差別的な行動をとる者はいないはずだ。だが、サッカー界では残念ながら差別的な行動をとる者が2015年にしばしば聞かれるようになった。

 明治安田生命2015 Jリーグチャンピオンシップ準決勝で決勝点を決めたガンバ大阪のFWパトリックに対し、Twitterで差別的な投稿があった。その後パトリックは「日本は世界で一番好きな国」と大人の対応をみせるが、すごく悲しい気持ちになった、と吐露(とろ)している。

 近年ではハーフの選手が増えている。昨年12月30日に開幕を迎えた第94回全高校サッカー選手権大会でも珍しい存在ではないし、大会から巣立ち、J1で戦い、今月13日からはリオデジャネイロ五輪出場を目指し最終予選を戦うU-23日本代表FW鈴木武蔵選手もいる。

 サッカー界に限らず、昨夏の甲子園を沸かせたオコエ・瑠偉選手もその1人だ。東北楽天ゴールデンイーグルスにドラフト1位でプロ入り内定を決めている。全国各地にいる、若い才能たちにとって励みになるニュースに違いないし、彼らのもつ反骨心は多くの日本人たちにとって必ず刺激になる。

 世界的にもハーフのアスリートは珍しくない。

 ひと昔前なら欧米でしか耳にしない無縁だった「人種差別」は実際、現在日本で起こってしまっている。2016年は始まったばかりだが、最も耳にしたくないニュースである。


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