操舵

2015 年 8 月 17 日

 復活のときは必ず訪れる。

 8月5日、南米サッカー連盟が主催するコパ・リベルタドーレス決勝戦セカンドレグが行われ、アルゼンチンの名門“リーベル”ことリーベル・プレートがメキシコのティグレスを3-0で下し、1996年以来となる3回目の大会制覇をなし遂げた。

 リーベルは、今年12月に日本で開催されるクラブワールドカップに南米王者として来日する。

 サッカー狂にとっては、今年の南米王者とボカ・ジュニアーズとで争われる「スーペルクラシコ」は死ぬまでに一度は観戦したい伝統の一戦のはずだ。アルゼンチン国内でも視聴率が20%を下がったことはなく、ときに40%を超える。

 発煙筒の煙にスタンドからの怒号、罵声、挑発、ゴールが決まれば警備員まで職場を放棄し発狂したファンたちと喜びを分かち合うという。

 ところが1901年創設されたアルゼンチンの名門は2011年、初の2部降格を経験している。2部では苦戦を強いられるものの1年で1部復帰を果たすが、この復帰は永遠のライバル“ボカ”にとって格好の標的となる。

 ボカのファンたちは鬼の首を取ったかのようにリーベルを罵倒する。「お前たちのピッチはここじゃない」という横断幕をスタンドにかかげ、「2部でたたかう気持ちをおしえてくれ」といったチャントを歌う。

 たとえ2011年に汚点をのこしたとはいえ、12年は2部優勝、13年はタイトルに恵まれなかったものの2014年には8年ぶりのリーグ制覇と17年ぶりの国際タイトル、そして今年19年ぶりに南米王者に返り咲いてみせた。

 Jリーグ初代得点王のラモン・ディアスがチームを建て直し、現在はクラブOBでアイドルMFだったマルセロ・ガジャルドが監督としてチームの躍進を担っている。

 リーベルが2部降格した2011年、日本では東日本大震災が起きた。

 天災と、人災の混乱から完全にぬけだしたと言えるだろうか。関心は年をおうごとに薄れつつあるし、4年を経た現在、地球の裏側で起きた奇跡のような復活とはほど遠いのが現状だろう。

 いわれのない誹謗中傷に堪え、血のにじむような努力をし、投げ出さなかった執念がリーベルにあったのは想像にむずかしくない。スポーツと人間の営みを同等にするつもりは毛頭ないし、規模もくらべられないほど大きく異なる。

 1901年のクラブ創設から、お爺さん、お父さん、孫といった親子3代の“リーベル一家”もめずらしくない。そのファンたちがチームを支え、声援をおくり続ける熱意も忘れてはならないだろう。

 どんな不遇で困難な時代であっても方向性の確かさと熱意を持ち合わせ、長期的な視野でものごとに取りくみ、操舵(そうだ)する人間たちがまともな神経の持ち主ならば、復活できることをアルゼンチンの名門クラブが証明してみせた。


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