野心

2015 年 8 月 4 日

 日本代表で鮮烈なデビューを果たし、今春にはイングランドの強豪チェルシー移籍がささやかれるも、最終的にドイツ・マインツに移籍を決めたFW武藤嘉紀は近年チャンスを“もの”にした代表例だろう。

 ハビエル・アギーレ前監督によって、日本代表に初選出されたのは昨年の9月。デビューしたウルグアイ戦ではポストを叩くシュートを放ち、4日後のベネズエラ戦で代表初ゴールを決め、その名前は一夜にして知れ渡った。

 その年のJリーグでも13得点を記録し、今季のファーストステージでも10得点を記録。おおくのファンに見守られながらドイツに旅立っていったのはつい先日のことである。

 東アジアカップ2015男子が中国で開幕をむかえ、日本代表は北朝鮮代表に1-2で敗れ、ヴァヒド・ハリルホジッチ体制5戦目にして初の黒星を喫した。

 W杯アジア予選シンガポール戦で引き分けたことによって、日本代表監督への評価は多少なりとも陰(かげ)りをみせてはいたが、大会前「決断力と攻撃力と意欲」をチームの方向性にかかげ、最後に「野心」を口にしていた。

 敗戦に終わった翌日「縦に速く攻めすぎて自滅」といった見方が強く、指揮官への不信感をつのらせた。だが、敗戦は監督だけの責任ではないはずだ。試合を指揮するのは監督だが、ピッチでたたかうのは選手たちである。主将をつとめたDF森重真人は試合後「チャンスをものに出来なかった」と漏らす。

 この試合に海外組がいれば異なる結果になっていたのかもしれないが、ハリルホジッチは今後の日本代表について「海外組50%、国内組50%」と口にしている。

 この言葉は、今大会のメンバーの半分がこの大会を境に“切られること”を意味するものだ。

 日本代表に招集される前の武藤は、知る人ぞ知る存在だったはずだ。その選手が与えられたチャンスを生かし、Jリーグでも結果を残しその地位を盤石なものにし、ドイツに戦いの場を移した。

 武藤と同時期に代表に招集された大型のFWもいたが、ゴール前で惜しいヘディングシュートを放つも結果をのこせずに試合を終え、その後は代表に招集されることはなかった。運で片づけてしまえばそれまでの話だが、その運を生かすも殺すも選手の力量に他ならない。

 北朝鮮戦でも与えられたチャンスを生かした選手たちはいた。唯一の得点を記録したMF武藤雄樹はその1人だし、先制点のアシストや精度の高いロングシュートをみせたDF遠藤航も新しい発見になったはずだ。

 大会は韓国が中国を2-0で下し、5日、日本が韓国に勝利すれば優勝のゆくえを分からなくする。海外組至上主義と揶揄(やゆ)される昨今の日本代表だが、国内組には与えられたチャンスを生かして欲しいし、選手たちの野心をみたい。


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