民意

2015 年 7 月 17 日

 サッカー界で、聖人と崇められた選手はいったい何人いるだろうか。

 古くはヨハン・クライフ、現役選手ではGKイケル・カシージャスがその代表者だろう。レアル・マドリードの下部組織に9歳で入団し、16歳で名門のベンチに座れるほどの才能にあふれる選手だった。17歳でトップチームデビューを果たしている。

 19歳になるとUCL(欧州チャンピオンズリーグ)決勝戦の舞台で正GKボド・イルクナーが試合中に負傷したため交代で大舞台のピッチを踏む。この出場は当時のUCL最年少出場記録を更新することになる。あどけなさが残る角刈りのカシージャスの姿を覚えているファンも少なくないだろう。

 そこから幾多の大舞台を踏むことになるカシージャスはレアル・マドリード一筋をつらぬき、スペイン代表でもUCL決勝戦から10日後に代表デビューを果たしている。

 主将として出場した2008年EURO(欧州選手権)10年南アフリカW杯、12年EUROの前人未到の“3連覇”もカシージャスなしには語れないほどの活躍でチームを勝利に導いている。端正な顔立ちと神がかったセービングを連発する姿から、いつしか「聖イケル」と呼ばれるようになる。

 その“聖人”が先日、ポルトガルの強豪FCポルトに移籍を発表した。

 クラブ歴代1位の出場記録741試合をほこるFWラウール・ゴンサレスには及ばないものの725試合に出場し、2位の記録を残しチームを去る。これを聞いたファンたちはクラブハウスにフロント糾弾のため集まったが、クラブが出した答えに変化はなかった。

 ラウールも2010年、不可思議な移籍をしている。

 レアル・マドリーと犬猿の仲にあるバルセロナでも“レジェンド”を手厚く見送った過去がある。クラブに2回目の欧州王者をもたらしたFWロナウジーニョだったが、その後は私生活もみだれ、練習も欠席するようになる。当然、試合でも輝きをうしなっていく。

 業を煮やしたチームは名門ACミランに移籍させる“配慮”をみせた。お世話になった選手への、せめてもの誠意である。

 それすらをしなかったチームにファンは憤慨し、長年チームの顔であったカシージャスを必要としたが、フロントは素知らぬ顔で選手を放出する様相は、どこかの国の政治のやり方をみているようだ。

 民意を大切にしない組織は、興味と信頼を失墜させる一因をつくる。

 レアル・マドリードはチームの顔でも放出するクラブだが、それでもアメリカ「フォーブス」が発表する資産価値があるスポーツクラブ(NFL、MLB、NBA含む)に3年連続で第一位に輝いている。

 Jリーグでもチームの顔となる選手は存在する。どんな名選手でも衰えは必ずおとずれるものだが今後、そのような選手に対しどのような花道を用意するかは、チームの度量が試される。


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