資質

2015 年 5 月 22 日

 サッカー選手を夢みる子どもは、最初に好きになったチームのユニフォームを着て、そのホームスタジアムのピッチに選手として立つことを夢見る。イングランド・リヴァプールに所属するMFスティーヴン・ジェラードは、そんな夢を実現させた選手の1人だ。

 すでに今年の1月に退団を表明し、700試合以上に出場したリヴァプールのレジェンドは、ホームスタジアム・アンフィールドに集まった満員のファンに盛大に見送られ最後のホームゲームを終えた。

 リヴァプールの下部組織で育ち、トップチームに出場を果たしてから選手生活のすべてを捧げる選手は現在のサッカー界では希少となっている。

 FWクリスティアーノ・ロナウド、FWガレス・ベイル、MFハメス・ロドリゲスは移籍金100億円を超えた3選手である。すべてレアル・マドリーの選手だが世界中の選手の夢でもあるクラブに勧誘されれば、心が揺れることは想像にむずかしくない。

 キャリアアップは全世界のサッカー選手が望むものだが、ジェラードは断固としてリヴァプールを離れようとはしなかった。

 実際、現在イングランド・チェルシーを指揮するジョゼ・モウリーニョはジェラードを「大好きな敵」と賞賛し、前回のチェルシー時代、過去に指揮したインテル時代とレアル・マドリー時代に、リヴァプールの英雄MFに3回オファーするが、頑なに断られたことを暴露している。

 キャリアアップを望んだ選手が必ずしも成功の道を歩めるとは限らない。

 FWマイケル・オーウェンは、リヴァプールの下部組織で育ちジェラードよりも2年先にトップチームデビューを果たした選手だ。1998年のフランスW杯の活躍で世界中のファンを沸かせ「ワンダーボーイ」と世界的な名声も手に入れていた。

 その後もリヴァプールで得点を重ね、2001年にバロンドールをも獲得している。それでも国内リーグ制覇はできず、選手の夢でもあるUCL(欧州チャンピオンズリーグ)獲得を目指し、2004年レアル・マドリーへの移籍を決断する。

 皮肉にもこの年、リヴァプールが20年ぶりにUCLを成し遂げる。0−3から同点に追いつき、PK戦の末にイタリア・ACミランを下す。のちに「イスタンブールの奇跡」として知られる伝説の決勝戦である。大逆転の狼煙をあげたのはジェラードの得点であり、この欧州制覇がキャリア最高の瞬間だとのちに語っている。

 その後オーウェンはマンチェスター・ユナイテッドで国内リーグ制覇を経験するが、欧州制覇を果たせぬまま選手生活を終えている。

 日本でもキャリアアップを夢みる選手は少なくない。悪いことではない。しかし、選手生活のすべてをクラブに捧げる選手、捧げられるクラブが、これからのJリーグに誕生することをつい夢みてしまう。


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