空席

2015 年 4 月 23 日

 FW岡崎慎司が所属するマインツは現在18チーム中11位にいる。この中堅チームで日本代表FWが12得点を記録しているのは立派というほかない。

 このチームはリーグ制覇の過去はなく、リーグ優勝争いもない。

 1905年に創設されたチームは100年目にして悲願のブンデスリーガ1部に昇格する。Jリーグでもみられるように、どの国のリーグでも“新参者”の目標は1部残留である。

 その年を11位で終え、翌年も11位で終えている。クラブに悲願をもたらし、一部残留を2年連続で成功させた監督こそのちにボルシア・ドルトムントを率い、ふたたび世界のトップランクに復権させた監督こそユルゲン・クロップその人である。

 走力と若手育成を武器にマインツに歓喜をもたらし注目をあつめ、UCL(欧州チャンピオンズリーグ)にもクラブ世界一にも輝いた1996−97年以降、乱脈経営がたたり債務超過により破産寸前まで追い込まれたドルトムントを2008年から任され、現在の位置まで引き上げたクロップが今季終了後での退任を発表した。

 走力を武器に切り替えの速い攻守はゲーゲンプレッシングと恐れられ、無名選手を見出し、のちにバイエルン・ミュンヘンに引きぬかれたMFマリオ・ゲッツェ、FWロベルト・レヴァンドフスキといった世界的な選手へと育てあげた若手育成の手腕がなければMF香川真司の発掘もなかっただろし、チームの躍進もなかっただろう。

 その香川が入団してからリーグ連覇、国内カップ制覇など黄金期をつくったこともクロップ監督の知名度を上げ、もし香川のマンチェスター・ユナイテッドへの移籍がなければ“功績”をどこまで伸ばすことができたのか、それは想像でしかない。

 ともかくもドルトムントの一時代は今季で終わる。

 手塩にかけてつくったチームの主力を毎年のように引きぬかれて、おもしろがる酔狂(すいきょう)な監督はこの世界にはいない。有望な選手に移籍話があるように有望な監督にもいくつも噂がある。

 今季が終了すると、いくつかのビッグクラブの監督の席が空く可能性が示唆されている。たとえば今季のUCLでベスト4を逃したフランスのパリ・サンジェルマンのローラン・ブラン監督がその1人であり、そのほかにも今季終了後に解任か退任の噂がある監督が今季はことのほか多いのが現状だ。

 移籍したユナイテッドでサー・アレックス・ファーガソン監督があと数年監督を続けていれば香川には違う人生が待っていたと、識者からもファンからもよくいわれている。

 トゥヘルがドルトムントの監督に就任し日本代表コンビが生まれるより、クロップがビッグクラブの監督に就任し、そのチームに香川を必要とされるほうがずっと夢がある。
 ただ、クロップが望むならの話ではあるが。


コメントをどうぞ