一因

2015 年 3 月 21 日

 イビチャ・オシム前日本代表監督は、かつて「なぜ海外組を呼ばないのか」という問いに「彼らの給料は所属するクラブが払っている」と答え「所属するチームのポジションまで確約できない」とも付け加えた。欧州から日本までの移動時間による選手のパフォーマンス低下を避けるため、海外組の招集を避けた。

 現在、浦和レッズを率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督も同様のことを述べ、アジアチャンピオンズリーグの難しさに「移動1時間につき1日の休養が必要」と移動の距離をなげいた過去がある。

 決して否定できない持論である。現在ドイツ・ブンデスリーガには多くの日本人選手が所属している。直行便でも12時間は必要であり、ここにペトロヴィッチ監督の持論を当てはめると12日間の休養が必要となる。

 シーズン中の選手にそんな悠長な時間はない。

 疲れている間にポジションを奪われかねないし、その場所に戻れる選手と戻れない選手が出てくる。出場がなければ、選手の生命線でもある試合勘が失われていく。だからこそ、オシム氏は当時スコットランドのセルティックに所属していたMF中村俊輔の招集を避ける一因を作った。

 そういう気配りができるからこそ、監督在任中にモンテネグロ代表が来日した際“元母国”のカメラマンやジャーナリストたちが少年のような笑顔でオシム氏と並んで写真を撮っていたのが好例だろう。彼らはユーゴスラビアという国家解体の憂(う)き目にあってもオシム氏を英雄視し、たとえ他国の代表監督だとしても愛情は変わるものではなかった。

 ヴァヒド・ハリルホジッチ監督が日本代表を発表した。

 バックアップメンバーを含めた43人という過去にない大所帯でスタートする。名前を呼ぶことのなかったMF遠藤保仁に対し「日本代表に貢献してくれた」と敬意を払ったことも器を感じさせる。

 この43人の中に監督自らが選んだのは何人か、疑問が残る。13日に来日した現状では「日本サッカー協会+監督」の選出と考えるのが妥当であり、ここから独自の色を出して貰いたい。

 1990年、オシム氏はユーゴスラビア代表を率いてイタリアW杯を戦った。民族が啀(いが)み合い、同国サッカー協会とメディアとファンからの“要求”が多く、グループリーグ初戦の西ドイツ戦では国民から望まれたメンバーで戦い1-4の敗戦を喫した。

 オシム氏はこの敗戦を免罪符にした。

 その後は独自の色で試合を行い、大会ベスト8に進出している。この手法を同胞のハリルホジッチ監督が用いるかは不明だが、3月以降の日本代表が今から楽しみではある。

 「負けるのが大嫌い」と就任会見で豪語した新監督が27日のチュニジア戦、31日のウズベキスタン戦で何を見せてくれるか期待したい。


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