知識

2014 年 12 月 24 日

 ザ・ブルーハーツなどで知られる、歌手の甲本ヒロト氏は「クリスマスは大いに楽しむべし。戦争だけは大いに憎むべし」と言った。

 UEFA(欧州サッカー連盟)は1914年に勃発した第一次世界大戦中に起こった「クリスマス休戦」という奇跡的な出来事へ敬意を評し、また100周年を記念し、ベルギーのコミーヌ=バルヌトンに記念の彫刻を設置し、ショートフィルムを作成した。

 クリスマスイブになると戦争は一時停戦に入り、争っていた両軍が“陣地”を離れ、歩みよって自国のタバコや新聞を交換し、それを吸いながら談話をした、という話は悲惨な戦争の逸話の中でも数少ない美しい話でもある。

 今回の「クリスマス休戦」は字のごとく、クリスマスの停戦中に両軍入り乱れてサッカーをした、というものだ。100年以上の歴史があるサッカークラブが欧州には幾つもあるため、当時からサッカーというスポーツが“言語”になっていたことは容易に想像できる。

 ショートフィルムは、UEFA会長ミシェル・プラティニのナレーションで始まり、名もなき兵士たちの手紙を同胞の“子孫たち”でもあるサッカー界のレジェンドたちが読んでいく。

 元イングランド代表のサー・ボビー・チャールトン、元フランス代表のディディエ・デシャン、元ドイツ代表のパウル・ブライトナー、DFフィリップ・ラーム、現役の代表選手も参加し、イングランドからはFWウェイン・ルーニー、ウェールズ代表MFガレス・ベイル、フランスからはGKユーゴ・ロリス、ドイツからはMFバスティアン・シュバインシュタイガーが参加した。

 手紙の内容には短い時間のなかで、つかの間の友情関係を作り、同じ人間として向き合ったこと、ひどいピッチコンディション、イギリス軍が持っていたボール、2つのチームがあればサッカーはできることなど、最後には審判のいない試合でも握手で終えたこと、笑顔で最後かもしれない挨拶をしたことなどが綴(つづ)られている。

 現UEFA会長を務めるプラティニはフランス人である、その当時を知る同胞の作家ポール・ヴァレリーは、「戦争とは互いに知らいない者同士の殺し合いであり、それで利するのは互いを知りながら殺し合わない者たちである」という言葉を残している。

 日本に限らず、欧州でも戦争を知らない世代が増えている。「クリスマスは大いに楽しむべし。戦争だけは大いに憎むべし」と語った甲本氏は、戦争を“知らない世代”である。日本サッカー界からの提案も望みたい。

 UEFAが行った式典は世界中に絶対悪を示し、サッカーの持つ更なる可能性を見出そうとしている。ベルギーに建設した記念碑のように、日本サッカー協会が所属するアジアサッカー連盟も学ぶべきものは多いのではないだろうか。


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