起伏

2014 年 11 月 20 日

 各国代表チームに用意されている時間は決して多くはない。
 与えられた少ない時間をいかに生かすか、が“キモ”になってくる。主要大会のホスト国は金銭の収入は大きいが、重圧の大きさは途方のないものになる。

 今年6月に、ブラジル人たちが体感したW杯の重圧は日本人には計り知れない。同じように各地域の大会のホスト国が強豪だった場合には優勝を義務付けられ、そうでなくともグループリーグ突破といった“ノルマ”が課せられるのが常である。

 来年1月にオーストラリアで開催されるアジア杯のホスト国の意気込みは高く、日本がホンジュラスにあてた1試合分を日本戦への“調整”にあてて勝ちに来ていた。研究に研究を重ね作ってきた“網”に日本はまんまとかかり前半戦を終える。

 しかし、ハビエル・アギーレ監督が後半開始から用いた“策”はその網を見事なまでに掻(か)い潜(くぐ)ってつかんだ2−1の勝利だった。その策はじつに巧妙で、攻撃の起点だったMF遠藤を交代に踏み切る。

 交代で入ったMF今野泰幸が得点を挙げたのは偶然だとしても、チームに安定感を与え、勝利に大きく貢献したのは確かである。DF森重真人の見事なドリブル突破からFW岡崎慎司がトリッキーに決めた場面は、アギーレが就任してから全試合に出場している森重の能力であり、メキシコ人監督の“目”によるものなのは見逃してはならない。

 これまでの日本は、いい流れが来ているときに得点を挙げることが出来なかったが、この試合ではそれをやってのけた。

 この試合を「アルベルト・ザッケローニ流のシステムで勝利した」といった見方がある。だが、ほぼ同じメンバーで挑んだW杯初戦のコートジボワール戦でこの“やり方”ができなかったのは前監督との確かな違いだろう。

 この2連勝の前にあったアギーレ監督を取りまく暗澹(あんたん)たる雲行きはなくなった、とは断言できない。後半アディショナルタイムに許した失点は、アジア杯のための課題ではないか。

 万事うまく行き過ぎているときほど、落とし穴が潜んでいるものなのはサッカーに限ったことではないはずだ。しっかり試合を終えることこそ真の強豪国の姿だろう。

 2014年はW杯への期待に始まり、屈辱を味わい、その後の不安といったさまざまな起伏(きふく)のあった1年ではあったが、年内最終戦を勝利で終えたのは来年を期待から始められることを意味する。

 現日本代表には、戦術や選手の配置変更といった柔軟性がこの試合でみられた。

 加えて6人まで交代が許されたこの試合で、アギーレ監督は3人のみの交代で終えたのは、アジア杯を見据えてのものだと考えても不思議ではないだろう。来年に向け、この勝利はまぎれもなく大きい。


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