節操

2014 年 10 月 30 日

 改革は順調に進んでいるのだろう。
 今季からFC東京を任されたマッシモ・フィッカデンティの改革である。このJリーグ初のイタリア人監督は、積極的に若手選手を起用し、今季の優勝はむずかしいが現在リーグ7位の位置にいる。

 その環境下で才能を開花し、日本代表の“武器”にまで登りつめたFW武藤嘉紀は、その代表例と言っていいだろう。若手を起用し、成功する監督は世界中に数多くいるが、リーグ初の外国人ほど“色眼鏡”で見られる存在はないだろう。

 1996年から現在でもイングランドのアーセナルを率いるアーセン・ベンゲルも、そのように見られた。

 そのことを自身の著書で「サッカーの母国で監督をする、ということは日本の相撲部屋で親方を任されるようなものである」といったようなコメントを残している。その後、このフランス人監督が歩んだ軌跡は、改革というよりサッカー界に革命を起こした、と言っても過言ではないだろう。

 世界中にいる若手の発掘と育成はその後のスタンダードにすらなった。

 FC東京のここ数年のシーズンを語弊(へい)なく言わせて貰えるなら、開幕した当初こそ順位は上だが、徐々に下げてしまう傾向にあった。今季はシーズン当初は16位まで順位を落としたものの徐々に順位をあげ、現在の順位に至っている。

 そのチームが来季、新たな改革を起こそうとしている。

 多摩川クラシコで知られ、その相手である川崎フロンターレのエースFW大久保嘉人の獲得を画策しているという。スペインのレアル・マドリード対バルセロナとで争われる“エル・クラシコ”に比べれば歴史や規模は及ばないが、“日本版”クラシコ楽しみにしているファンは多い。

 本家クラシコが盛り上がる一端を作っているのが、選手の移籍である。

 近年では、現在バルサの監督を務めるルイス・エンリケは現役時代、レアル・マドリーのリーグ優勝に貢献するものの“禁断の移籍”といわれるバルサに移籍。その数年後、やり返すようにバルサのエースFWのルイス・フィーゴを引き抜く。当時の会長フロンティーノ・ペレスは「我々はバルサの心臓を盗みとった」と、怒りを助長するようなコメントを残している。

 いささか節操(せっそう)のないやり取りだが、この一件ですら両者の“暗く長い歴史”から見れば、ほんの一部でしかない。

 Jリーグにこれから、スペインほどの禁断の移籍が生まれないにしろ、キッカケさえあれば生まれてもおかしくはない。たとえば、残り4節となった今季のJリーグで現在1位の浦和レッズがこのまま優勝した場合、サンフレッチェ広島のファンは決して心穏やかではないだろう。

 チームが強くなるための改革には、他チームから見れば美しくない場合が時としてある。


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