覚醒

2014 年 10 月 22 日

 ACミランに所属するMF本田圭佑は昨季、結果が出せずにいると「火星人」とメディアから中傷され、ファンからは「10番をチームに返せ」とまで言われていた。

 今年1月に入団し、苦悩の“半年”を過ごした日本代表MFは、今季からフィリッポ・インザーギにチームを任されると一転、目覚ましい活躍をみせている。

 チームの黄金期を支えた名FWの指導が、本田に得点の“獲り方”を授けたのは想像にむずかしくないだろう。

 セリエAの開幕戦でチームのシーズン第1号となる得点を決めると2試合をのぞく全ての試合でネットを揺らしている。7試合で6得点を決めれば、いくら辛口で知られるイタリアメディアといえど、文句の言いようがない活躍である。

 チームの最高経営責任者であるアドリアーノ・ガッリアーニも「昨季はチームに弟が来ていた」と冗談を言い、メディアもまた「覚醒」とまで書き立てている。いささか節操(せっそう)のないやり取りだが、結果さえ残せばすべてが覆すことが出来るのもスポーツの世界ではある種の常識とされている。

 何が彼を変えたかは人によって異なるにしても、一番の変化は走行距離が挙げられるだろう。数字的に大きな変化はなくとも、FKでの得点を除けば、長い距離を走ることによってチャンスを演出し、結果に繋げているは誰の目にも明らかだろう。

 技術には優れた選手だが、今季は泥臭く、チームで一、二を争うほど汗をかいている本田にチームは信頼をよせ、イタリア国内でも、世界にも、改めて認知される存在なっているのは結果が雄弁に語っている。

 イタリアで好調な本田だが、日本代表として戦ったジャマイカ、ブラジルとの2連戦では得点を挙げることは出来なかった。ブラジル戦は45分のみの出場になったが、なぜあのメンバーで挑んだのか、といったものや試合後に相手FWが残した言葉など、いまだ議論の種になっている。

 0−4のすべての得点を叩きだしたFWネイマールは、日本代表から必死さが伝わって来なかったことや「ブラジル代表でも泥臭く攻め続けるのに、格好を気にしているように見えた」と日本の印象を話している。

 この試合、前線で奮闘していたFW岡崎慎司も「ネイマールを削りにいく選手がいなかった」と、プレー面での激しさと厳しさが足りないことを嘆(なげ)いている。

 だからと言ってファウルをしろ、というものではない。

 正々堂々と戦うことが日本人に求められてきた姿勢だが、サッカーには美しくない駆け引きが必要とされるし、強豪相手の人選にもその要素が必要となってくる。

 ハビエル・アギーレ監督の日本代表が覚醒するのは来年1月のアジア杯なのか、来月の親善試合なのか、観ている側にも忍耐が必要とされている。


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