逆鱗

2014 年 9 月 25 日

 「決定力不足」が叫ばれると、批判の的になるのはまずFWというポジションだろう。もはや宿命と言っていい事柄である。

 サッカー王国ブラジルにあっても今夏、自国で行われたW杯で優勝を逃すとCF(センターフォワード)の欠如が叫ばれた。ブラジル生まれのCFは多いものの自国ではなく他国で才能を開花させる選手がおおいのは、昨今の潮流といっても過言ではないだろう。

 今季からイングランドのチェルシーに移籍を果たすと才能を爆発させているジエゴ・コスタもその一人だ。

 昨季はスペインのアトレティコ・マドリードの一員として40年ぶりに欧州チャンピオンズリーグ決勝進出に大きく貢献した。このブラジル生まれの“スペイン人FW”は鳴り物入りでプレミアリーグに参戦、開幕から5試合を終えて7点を叩き込み、期待に応えている。

 多くのブラジル人から「裏切り者」と批難される中、本人は「すべてをスペインから与えてもらった」と理由を述べている。王様ペレも「選ぶ権利は選手にある」とした上で「スペインでチャンスを得て、過去にブラジルから正当な評価を得られなかったのなら」と擁護(ようご)している。

 ところが、クラブチームでは好調のジエゴ・コスタもスペイン代表として出場したブラジルW杯を含め、親善試合でも結果を出せずにいるからサッカーとは分からないものである。

 Jリーグのセレッソ大阪に所属するFWカカウはそれとは異なる。

 このブラジル生まれの“ドイツ人FW”は、ジエゴ・コスタとは違い、ブラジルサッカー協会から一度も声をかけられることなくドイツ代表を選び、2010年の南アフリカW杯にも出場し、3位入賞に貢献している。

 23日、降格圏を争うセレッソがホームで敗れると、キャリアの中で降格を体験したことのない“エリートFW”の逆鱗(げきりん)に触れた。

 危機感が足りない、とし「ぬるい雰囲気を感じることがある」とチームに投げかけ、もっとプライドを懸けて戦う必要性を論じている。そのことは日本代表監督のハビエル・アギーレも同様の意見を述べており、新指揮官のテコ入れに期待したい。

 ACミランに所属するMF本田圭佑はリーグ4戦で3得点を決め、マインツに所属するFW岡崎慎司は5試合で5得点を決めリーグ得点王の位置にいる。彼らがブラジルW杯で「決定力不足」を露呈(ろてい)したのは古い過去の話ではない。

 そして批判の的にもなった。

 それらの苦い経験は選手として足りなかったものを気づかせ、現在の結果につながっていると考えても不思議ではないはずだ。カカウの言う「ぬるい雰囲気」は海外から見た日本全体を指すとしたら、この言葉は日本サッカー協会、全Jリーガーにとって聞き逃すことのできない事柄だろう。


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