真価

2014 年 9 月 17 日

 MF香川真司がイングランドの名門マンチェスター・ユナイテッドから、ドイツのボルシア・ドルトムントに復帰が決まるとドイツメディアは、ある描写を掲載した。

 病的な顔で赤いユニフォームを着た香川が鉄の格子(こうし)で作られた牢屋に閉じ込められており、ドルトムントのユルゲン・クロップ監督が格子を力ずくで広げ、愛弟子を救い出そうとしている描写である。

 ユナイテッドにとっては何とも痛烈な皮肉であり、ドイツから見れば心の底から復帰を喜んでいることを伝えている。

 “救い出された”愛弟子が復帰戦でさっそくゴールネットを揺らした。

 ドルトムントで世界的な知名度を高め、世界的な名門チームに入団しリーグ制覇に貢献した1年間と、冷遇(れいぐう)され毎年のように優勝を争っていたチームもリーグ7位に終わる失態の1年間を味わった選手はそう多くはないだろう。

 13日(日本時間)の復帰戦では後半19分に途中交代したが、17日に開幕をむかえる今季の欧州CL(チャンピオンズリーグ)では日本人のファンだけでなく、ドイツ人のファンにとっても大きな期待をもたせてくれる一戦だったはずだ。

 香川のゴールした場所から南へおよそ700km。

 ACミランに所属するMF本田圭佑が止まらない。失意に終わったブラジルW杯を経験した日本のエースは、セリエA開幕から2戦連続でゴールを決めている。

 ACミランは昨季の低迷により今季の欧州の舞台への出場はない。名門復活のために本田の活躍が鍵となるのは言うまでもないが、背番号10に相応しい活躍を喜んでいるのはこちらも日本人だけではない。

 セリエA開幕からまだ2戦だが、ここまで連勝しているのはユヴェントス、ACミラン、ASローマのみである。20日にはリーグ3連覇中のユヴェントスとの対戦が控えており、17日に欧州CLに出場するイタリア王者が疲労していることを考慮しても本田の真価が問われる一戦になるだろう。

 ブラジルW杯では2大エースとして日本中から期待され、各国メディアからも大会のダークホースとして注目を集めた2人だが、それに応えることができなかったのは周知の事実である。そこから這(は)い上がろうとする姿はこれからも目が離せない。

 選手の誰もが期待された通りの活躍ができるわけではない。

 ハビエル・アギーレ日本代表監督の戦績は現在1分1敗である。堅守速攻を得意とするならば守備が脆弱(ぜいじゃく)すぎるし、一喜一憂するならば、このメキシコ人監督に烙印を押さねばならない。

 失望と歓喜は、選手も監督もファンも平等に味わうことのできるものだが、その過程を知ることによって味わいが増すものなのは広く知られている。その意味では2人の“これから”は楽しみである。


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