路線

2014 年 7 月 24 日

 新監督が誕生した。日本代表の話ではなく“セレソン”ことブラジル代表の話である。

 期待された自国開催のW杯ではドイツに1-7の歴史的な大敗を喫し、その後おこなわれた3位決定戦でもオランダに敗れ、ブロンズ色のメダルすら手にできず4位、結果的に惨敗に終わった。

 ブラジル国民のみならず、多くのファンからも優勝を確実視されていたセレソンの惨敗は“サッカー王国”と呼ばれた立ち位置さえ揺るがすものになった。敗因としてドイツ戦のDFチアゴ・シウバ欠場やエースのFWネイマールの離脱などが挙げられている。ただ、ドイツがW杯を制覇したことが王国にとって唯一の慰(なぐさ)めにもなっている。

 日本でもなじみ深いドゥンガが再びセレソンを率いることとなった。

 ジュビロ磐田で“鬼軍曹”とよばれた同氏が、現役引退後にコーチも監督経験もないままセレソンを任されたのは2006年のドイツW杯終了後のことである。

 ドイツW杯では、全盛期にあったMFロナウジーニョ、MFカカ、FWアドリアーノ、この大会でW杯通算得点の記録更新をするFWロナウドがいた。各ポジションにエース級の選手たちを揃えながらも準々決勝フランス代表に0-1で敗れ大会を去る。

 このW杯を最後に現役引退を決めていたMFジネディーヌ・ジダンによってフランス代表はチームとして団結していた一方、強すぎる個性によってセレソンは一つになれなかった。

 強すぎる個性をまとめられる監督として、白羽の矢を立てられたのがドゥンガだった。だが、負けないサッカーから守備的になりすぎたセレソンにブラジル国民は「つまらないサッカーをする監督」というレッテルを鬼軍曹に貼った。

 ブラジルサッカー協会の決定は、王国の威信を取りもどすのに必要なのはファンタジーではなく、現実をみつめた勝利だということを監督人事によって示している。

 たしかにドゥンガに率いられたセレソンはブラジル国民を納得こそさせられなかったが、堅実で負けにくいチームだった。2010年南アフリカW杯では準優勝したオランダに不運も重なり敗れている。

 王国復権の重圧を考えると本来ならば歓迎される時期だが、ブラジル国内のアンケートによると8割近いファンがドゥンガの監督就任に反対しているという。ドゥンガ自身も「結果を出すことでしか信頼されない」と語気を強めている。

 ブラジルW杯において、なぜコスタリカがベスト8に進めたかについては、ありとあらゆる評価を得ている。自分たちの力を過信せず、謙虚であり、真に相手へのリスペクトがあったことは先ず挙げられている評価である。

 ブラジルサッカー協会が選んだ、いわゆる現実路線は日本サッカー協会が選ぶ次期監督に求めるべき必要な路線の一つだろう。


コメントをどうぞ