躍進

2014 年 7 月 9 日

 1995-96シーズン、欧州CL(チャンピオンズリーグ)において連覇をめざしていたアヤックスが決勝戦でユヴェントスに敗れると、オランダの名門を率いていた監督は試合後「我々は負けることに慣れてない」と、後世まで語り継がれる名言をこのとき残している。

 94-95シーズン、アヤックスは国内リーグとCLを無敗で優勝する。翌シーズンも国内リーグを連覇し、CLでは準決勝パナシナイコス戦1st legを0-1で落とし同大会において1年ぶりの敗戦を喫するものの、2nd legを0-3で逆転勝利したチームは連覇へ視界良好なはずだったがイタリアの盟主に敗れてしまう。

 「負けることに慣れてない」という言葉に裏打ちされた確かな強さが彼らにはあった。

 その後、移籍の自由化などもありアヤックスの根幹を担った主力選手たちは各国強豪クラブに移籍し、監督もまたチームを去った。監督はその後をバルセロナ、AZ、バイエルンミュンヘンといったクラブで輝かしい功績を挙げ、世界的な知名度のある「名将」という地位を確固たるものにする。

 名将ことルイ・ファン・ハール監督が率いるオランダ代表がブラジルの地で躍動している。

 W杯グループリーグ初戦で前回王者スペインを5-1で一蹴し、チームとして勢いに乗ったのは想像にむずかしくない。試合開始前バルセロナで過ごした日々を懐かしむようにMFシャビ・エルナンデス、MFアンドレス・イニエスタ、DFジェラール・ピケと談笑している。かつての教え子たちを打ち負かして現在がある。

 的確な人の配置と変幻自在なシステムチェンジ。勝利を近づける選手交代は今大会のどの部分を切り取っても、神がかっている。なかでも準々決勝コスタリカ戦の延長後半、PK戦を見据えたGK交代はオランダのメディアは「黄金の選択」と讃えた。

 今大会ベスト4進出は選手の能力を差し引いても、ファンハールの力によるところが多分にある。だが、このオランダ人の名将は謙虚さを忘れない。コスタリカ戦後「もし、GKを交代して負けていたのなら批判されるのは私であり、サッカーとはそういうもの」とコメントしている。

 バルセロナ監督時代、通訳兼アシスタントコーチとしてジョゼ・モウリーニョがいたことはよく知られている。いまや世界屈指の監督となったポルトガル人同様に選手を守る姿勢には精通するものがある。

 2000年、1回目のオランダ代表監督の冒険はW杯出場を逃す失敗に終わった。10年ぶり2回目となるオランダ代表監督の冒険は現在のところ順風満帆であるが、決勝戦を懸けてたたかう相手はFWリオネル・メッシ擁するアルゼンチンである。

 バルセロナの下部組織カンテラ史上最高傑作と誉(ほまれ)高いメッシ相手にファンハールはどんな策を仕掛けるか。期待は膨らむ。


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