土壌

2014 年 7 月 4 日

 1966年W杯イングランド大会、グループリーグ2戦を終え1勝1敗でむかえたイタリアはグループリーグ最終節で北朝鮮に0-1で敗れてしまう。

 その結果、1勝1分1敗で勝ち点を伸ばした北朝鮮がグループリーグを2位で通過する。敗退を余儀なくされたイタリアは、母国の空港に戻ると腐ったトマトや卵を投げつけられた。

 その雪辱を果たすかのように70年メキシコ大会では準優勝を果たしているのは見逃せない。神様ペレ擁するブラジルに決勝戦で敗れはするものの“4年前”に国民から受けた仕打ちと無関係ではないだろう。

 2014年ブラジルW杯、アジア代表は奮わなかった。ベスト16に進出したチームもなければ、1勝も挙げられなかった。グループリーグ敗退した韓国が似たような仕打ちを受けたのは周知の事実だろう。

 空港では「韓国サッカーは死んだ」といった横断幕に迎えられ、整列した彼らに対して飴を投げつけた。「飴」には韓国独特のニュアンスが含まれており、歓迎とは対局の、決して穏やかなものでない。

 優勝候補と目された国々は悲惨を極めた。イタリアは出迎えるファンは見当たらず、イングランドではたった一人のお婆さんだけだったというが真相は定かではない。前回王者のスペインでは選手たちを励まそうと200人ほどのファンが出迎えに集まったそうだが選手たちは飛行機からバスに乗り込み、逃げるように空港を去ったという。

 4年前、南アフリカW杯においてベスト16入りを果たした日本も経験したようにどの国でも帰国を心待ちにされる。グループリーグを突破した国々は、たとえベスト8入りを逃しても歓迎をもって迎えられ、その快挙を受け、国から臨時ボーナスが支払われるのが通例である。だが今大会で初のベスト16入りを果たしたギリシャ代表選手たちは、それを受け取らなかったのは特筆すべき出来事だろう。

 彼らは国民のためにプレーしただけと語り、そのボーナスをトレーニングセンター建設に役立て欲しい、と要望したという。財政危機の真っ只中にあるギリシャ“国民”が、後世の代表選手たちのために今大会の快挙を役立たせようとしているのは美しい物語である。

 日本は、1勝を挙げられなくともファンは無関心ではなく、罵詈雑言でもなく、歓迎した。ファンはもとより選手たちも違和感を覚えたと聞く。新しく招聘(しょうへい)される監督が、日本代表を魔法のように強くしてくれるとは夢物語でしかない。

 戦いを終えた選手たちに労いの言葉も必要だが、負けても歓迎される土壌では真の強豪国への道は遠く険しいはずだ。少なくとも今大会ベスト8に残った国々はそういった土壌のなかで開花した強さなのはよく知られており、その重圧の中で今も戦っている。


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