公算

2014 年 6 月 17 日

 今はやる気にみちている、と言い「キャプテンとして国民のために勝つことしか考えていない」と、FWディディエ・ドログバは話した。

 このFWこそが、コートジボワールをW杯初出場に導いた英雄だということは広く知られている。2006年のドイツ大会において、初のW杯に挑んだアフリカの雄は、アルゼンチン、オランダ、セルビア・モンテネグロと同組に入り、強豪国と1点を争う健闘もむなしく1勝2敗で大会を去った。

 2度目の挑戦となった2010年南アフリカW杯では、ブラジル、ポルトガル、北朝鮮と同組となり1勝1分1敗でグループリーグ敗退を余儀なくされた。彼らにとってのW杯は常に「死のグループ」での戦いを強いられてきた。

 だが、今大会はちがう。

 優勝候補もいなければ、強豪国のノルマとされるベスト16を経験したのも日本とコロンビアのみである。言い換えれば、コートジボワールにとって初めてグループリーグ突破の公算が大きいW杯なのである。

 初戦は日本を2-1で下した。

 コートジボワールをW杯という檜舞台に上げながらも、ベスト16に進めていないドログバが「国民のため」という言葉には、並々ならぬ決意に裏打ちされたものだろう。

 所属したクラブでは欧州を制し、世界屈指のFWにもなった。そのことでコートジボワール随一の英雄となったのは周知の事実だろう。

 ただ、36歳になった英雄にサッカー選手として残された時間はあまり多くは残されていない。おそらく“お飾り”ではなく“選手”として挑めるのは、今大会が最後となるだろう。

 ブラジルW杯初戦を最後尾からみつめたGK川島永嗣は、後半17分のドログバ投入後、あきらかにアフリカの雄が様変わりするようすを肌で感じとり、「試合の流れは変わってしまった」とコメントする。絶対的なエースを後半中盤まで温存し、プレーに直接関与したわけではなく、そこから2分後、4分後とクロスボール2本で逆転しているのは偶然とは言いがたい。

 力を与える影響力はもとより、相手を震撼させ、英雄がピッチに立つことによって、チームのギアが1つも2つも上がることを示した。

 コートジボワールのサブリ・ラムシ監督は試合後「たやすい決断ではなかった」と話す。徹頭徹尾、ドログバ投入がもたらす力を信じたと捉えていいだろう。たとえ先制点を許しても、その時を信じた。よほどの覚悟がなければ、この作戦を用いるのは困難だが、勝利への意志でそれをおぎなった。

 対して、日本は覚悟をみせることができたのだろうか。その覚悟の差が勝ち点を0から1にし、3に“した者”と“された者”をつくった大きな要因だろう。

 かねてから日本代表選手たちは「W杯優勝」を口にしてきた。その覚悟をギリシャ戦で見たい。


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