偉大

2014 年 5 月 18 日

 イタリアには「GRANDE:偉大なる」と形容されるチームが2チームある。

 トリノとインテルナツィオナーレ・ミラノこと“インテル”がそれにあたり、前者は1940年代にセリエA 5連覇という前人未到の大記録を打ち立てるが飛行機事故により全員がこの世を去った。後者は60年代にセリエA 3連覇、チャンピオンズカップ2連覇、イタリア勢初の世界王者に輝いている。このときの会長はアンジェロ・モラッティという大富豪である。

 「鉄人」と愛された選手がついにピッチを去る日がきた。

 1995年からインテルに所属し、1999年から主将を務め、今年の8月で41歳になるMFハビエル・サネッティが今季限りでの現役引退を決めた。クラブの暗黒期と黄金期を主将として体験したアルゼンチン人にとって、青と黒のユニフォームを脱ぐのは感慨深いものだろう。

 アンジェロの息子である前会長マッシモは95年に会長に就任。最初に見出された才能こそサネッティであり、その後のキャリアの全てをインテルに捧げた。

 マッシモに、選手を見る目があったのか、といえば疑問符があるのはよく知られ、就任から10年間で1,000億円以上を選手獲得に投じ、獲得したタイトルはたったの一つだった。

 そのため「偉大なる浪費家」と揶揄(やゆ)されてきた。それでもインテルの練習場に姿をみせると、ファンたちが絶叫をもって迎えてくれるのもこの会長の特徴でもある。選手のわがままに付き合い、わるく言えば放蕩(ほうとう)息子たちを辛抱強く愛しつづけた。

 ジョゼ・モウリーニョ監督によって45年ぶりとなる欧州王者に返り咲き、先代も達成することができなかった国内リーグ、国内カップ、欧州CL王者の3冠を成し遂げている。その中心には常にサネッティがいて、チームに結束をもたらしていたのも良く知られている。

 結束をもたらしていたものの一つにチームメイトへの配慮が挙げられ、あらたに入団してきた選手には積極的にコミュニケーションをとり、会長、監督、選手たちの間に立ち、個人練習が必要な選手には声をかけては一緒に練習に取り組んできた。

 ブラジルW杯で戦う日本代表が発表された。

 そのインテルに所属するDF長友佑都も選出された。今季、名門のキャプテンを任された経験をもつ選手が、初のW杯に挑む選手たちとどう接するかに注目したい。W杯初出場を前回体験した長友は、初出場選手の気持ちが誰よりも分かるはずだし、その後シンデレラのような道のりを歩いたのは皆が知っている。

 長友はサネッティに対し、『人間性が素晴らしい』と公言している。他チームからも「キャプテンの中のキャプテン」と尊敬をあつめ、その薫陶(くんとう)をチームメイトとして受けた唯一の日本人の今後に期待したい。


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