後釜

2014 年 4 月 24 日

 ベンチに座るずっと以前から不安視され、座ってからはその采配を疑問視され、そして最後は1シーズンを終えることなくクラブから見限られた。

 イングランドのマンチェスター・ユナイテッドがデイヴィッド・モイーズ監督に別れを告げた。ひょっとしたら特別な監督でなければ、よりよい座りごこちを与えてくれないのが世界屈指の名門に数えられるベンチなのだろう。

 前監督サー・アレックス・ファーガソンが偉大すぎたことに疑いの余地はない。

 加えて、この名門はただ強いだけではなく、伝説として世の中は扱っている。欧州CC(チャンピオンズカップ:CLチャンピオンズリーグの前身)の時代、1958年に優勝候補に挙げられながらもミュンヘンの悲劇によって主力のほとんどを失ってしまう。その事故から生還した監督と選手たちとでその事故から10年後に初の欧州制覇を成し遂げている。

 これだけでも英雄視されていい功績だろう。

 ところが70年代に入ると世代交代に失敗し、2部に降格するほど低迷期に入ってしまう。1年で1部に昇格するが、低迷期を脱するまでには至ってはいない。80年代に入り、暗黒期から黄金期への架け橋をかけたのがファーガソン監督その人である。

 86年から昨季まで率いられたチームは世界中からその強さを認知された。そんなチームを率いるだけでも骨が折れる仕事である。

 リバプール一筋で昨季引退したDFジェイミー・キャラガーは、国内で覇権を争ったユナイテッドの強さを理解する一人である。過去と現在を照らしあわせ『私がプレーしていた時は、圧倒的な強さを持っていた』とし、『何がしたいのか分からない』と吐きすてた。

 また、『エヴァートン戦のようなユナイテッドと戦いたかった』とコメントしている。モイーズにとって最大の悲劇が同じスコットランド出身の大先輩の跡を継いだことだとすれば、その最後は自分が11年指揮したエヴァートンにそのとどめを刺されたことが最大の皮肉だろう。

 解任理由は、来季の欧州CL出場権を逃したことが大きな要因である。出場権と勝利給だけでもチームを潤してくれる同大会は、クラブの価値すら高めてくれる。

 「ファーガソンも3年間は無冠だった」、「早計すぎるのでは」といった声が聞こえるが、天文学的な金額で選手が他チームに移籍する現在ではまさに“時は金なり”なのだろう。

 世界屈指の名門クラブの決断もまた迅速だった。

 次期監督候補には、ユルゲン・クロップが候補に挙がっている。このドイツ人監督は若い選手を育て上げ、国内リーグを2連覇した実績がある。その功績の中心にいたのが香川真司であり、その活躍が認められ、欧州の“一ブランド”に仕立て上げたその人であるのはよく知られている。


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