灯火

2014 年 1 月 9 日

 1920年から始まった東京箱根間往復大学駅伝競走、いわゆる箱根駅伝は90回を迎え、東洋大学の4回目となる総合優勝で幕を下ろした。1912年、「五輪で日本を強くする」ことをスローガンに選手の育成がこの大会の祖となっている。

 正月の風物詩として絶大な人気を誇る一方、箱根駅伝は選手にとって弊害ととらえる者もいる。

 オリンピック競技に箱根駅伝の一区間分となる20km前後を走る種目がないことや、固いアスファルトが選手生命を縮める、という見方がある。箱根駅伝で名を馳せ、過去のオリンピックにおいて活躍した選手が少なくないのも事実だが、箱根路を走らなければ決して得られないものがあったはずだ。

 知名度である。

 その日を境にその名が全国区になるのも箱根駅伝の特徴でもある。例えるなら東洋大学在学中5区を走り、歴代区間記録1位から4位を独占した柏原竜二を知らない者はいないだろう。社会人になった現在でも出場する大会には多くのファンが詰めかけている。

 アスリートにとって注目を集めることと才能を伸ばすことは無関係ではない。

 高校サッカーもその一つだろう。

 長崎県国見町。九州地方にある小さな町を一躍「全国区」にし、当時無名校だった国見高校の名を全国に知らしめ、強豪校に仕立てあげたのは小嶺忠敏氏の功績に疑いの余地はない。6度の選手権制覇は戦後タイ記録であり、東京の名門・帝京高校に並ぶものだ。

 小嶺氏はかねてから『“国立”は選手を巧くする』と語っている。『ヘタなシュートでも観客が沸く』その歓声こそ選手に自信を持たせ、選手をより高みに連れていくのだという。

 その“国立”こと国立競技場は、2020年の東京オリンピックのため改修が決まり、現在の姿で争われる最後の大会となる。「国立最蹴章」と銘打たれた第92回全国高等学校サッカー選手権大会は準決勝と決勝の3試合を残すのみとなった。

 今大会は昨年10月にFIFA U-17W杯UAE大会において世界中から賞賛の声をあつめた日本代表選手たちの所属高校と前回大会優勝校が地方大会で姿を消している。

 スター不在の大会という見方もあるが、昨年PK戦により準優勝に終わった京都府代表・京都橘高校が優勝候補の最右翼にいた千葉県代表・市立船橋高校を破りベスト4に勝ち上ってきた。

 美しいゴールの“尺度”は人によって異なるが、昨今の「ポゼッションサッカー」の影響か、ゴール前で素早いパス回しからゴールを試みる高校が増えている。その一方で伝統校がもつ質実剛健な攻撃は影を潜め、シュートを打てる場面でショートパスを選択する場面を目にすることが多かったのも今大会の特徴でもあった。

 国立最蹴章、風前の灯火(ともしび)さながら未来を感じさせる選手との遭遇を期待したい。


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