一縷

2013 年 12 月 6 日

 先週末、1年間の苦労が報われず肩を落とす者たちがいれば、一縷(る)の望みをつないだ者たちがいた。

 11月30日、J1優勝に王手をかけていた横浜F・マリノスがアルビレックス新潟に0-2で敗れる。すると、前節の敗戦により自らで優勝の“芽”を摘んでしまったサンフレッチェ広島、鹿島アントラーズにも優勝の可能性が出てきた。

 手放してしまった優勝の可能性をふたたび引き寄せたのは、最後まで“勝負”を投げ出さなかったからに他ならないが、“可能性”をプレゼントしてしまったマリノスは不本意ながら今季のJ1を盛り上げる一役を買う結果となった。

 「経験の差」で片付けるには早計だが、優勝を期待する6万人を超えるファンで埋まる“ホーム”日産スタジアムに加え、9年ぶりの優勝を目前に控えた選手心理を考えると困難は伴うものである。

 主将の中村俊輔も試合後、『硬くなっている選手がいた』と漏らすほど、チームの出来に満足してはいなかった。

 たとえ9年前の優勝をしる幾人のメンバーがこの試合に出場していたとしても、勝利を信じる6万人を超えるファンの声援と、開幕7連勝を阻止したアルビレックスが相手だったことを考慮すると、ピッチ上では計り知れないプレッシャーがあったはずだ。

 一縷の望みをつないだサンフレッチェとアントラーズだが、奇しくも最終節で顔を合わせる。前者は後者に勝利しマリノスが引き分け以下なら2連覇が達成される。後者は大量得点での勝利とマリノスの大量失点を期するしかない。

 12月1日、J1昇格を夢みるJ2のプレーオフが行われ、京都パープルサンガと徳島ヴォルティスがプレーオフ決勝に駒をすすめた。

 J2年間順位3位と6位、4位と5位が争い、その勝者が決勝に進む。その決勝の勝者が念願叶い、J1に昇格を果たす。昨季は有利なはずの3位と4位が相次いで敗れ、6位の大分トリニータが最終的にJ1昇格を果たした予想が難しいプレーオフである。

 来季より「J3」と名称が変わる「JFL」から、今季J2参加1年目で6位の成績でプレーオフ進出を決めたV・ファーレン長崎は、3位パープルサンガとの試合こそ0-0で引き分けたが、大会レギュレーションによりJ1昇格は来季に持ち越しとなった。「オリジナル10」でもあるジェフユナイテッド市原・千葉も同様のかたちで敗れ、来季に“夢”を託さねばならない。

 優勝も昇格も有利不利はあったとしても、試合が開始されればどちらに転ぶか分からないのがサッカーの醍醐味である。

 苦労は必ず報われるとは限らない。だが、優勝や昇格が懸かった試合に出場した経験は、たとえその時に敗れたとしても別の形で報われるものだと強く信じたい。それこそがファンの一縷の望みではないだろうか。


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