災厄

2013 年 11 月 16 日

 甚大な被害を及ぼした台風30号は、フィリピンで多くの死傷者を出している。天災から学ぶべきものを学び、改善を重ねてきた歴史が人類にはあるが、お悔やみを申し上げたい。

 対岸の火事だったはずだ。

 天災とは異なり、スポーツの世界では「同じ轍(てつ)を踏むまい」と意識するしかない。茹(ゆ)でガエルのように危機に瀕(ひん)しながらも、見て見ぬふりをしていたのではないだろうか。

 昨季のガンバ大阪に続き、今季もJ1の名門がJ2に降格する。

 前者の名門は今季J2で序盤こそ奮(ふる)わなかったが、徐々にガンバらしさを取り戻していく。夏にFW宇佐美貴史がドイツからチームに戻ってきたこともあり、J1復帰を加速させた。ガンバユース史上最高傑作といわれた逸材の復帰は、理想的な形でチームを助け、来季の展望をも明るくした。

 後者の名門ジュビロ磐田は、シーズン序盤から“予兆”はあった。対戦相手たちは、シーズン最初のゴールを決められたチームはJ2に降格するという、FW前田遼一の「デスゴール」を恐れた。

 実際、名古屋グランパスを率いるドラガン・ストイコビッチ監督はジュビロとの開幕戦を終えると記者会見で『セーフ!』と言い、笑いを誘ったのは小さくない証拠である。

 6年連続の皮肉な「実績」にメディアやファンの注目も集まり、徹底“マーク”に前田自身も苦しんだ。開幕から1ヶ月後の4月に初得点をあげるが本来の調子を取り戻せずにいると、6月から日本代表から遠ざかっているのも決して無関係ではないはずだ。

 エースが得点をあげられない日が続けば、チームは苦しい。だが、サッカーとは1人の選手が調子を落とし、チーム力をも落としてしまっては「チーム作り」に疑問符がつくのは避けられない。

 2000年代初頭、チームは黄金期を築いた。

 各メディアで、Jリーグ歴代最強チームを選ぶ企画があれば必ず名前が出るのもジュビロ磐田というチームだ。「最強」とよばれたチームの最大の宿命は世代交代だが、選手たちやコーチ陣が毎年のようにチームを離れていったのが、凋落(ちょうらく)の要因ともされる。

 名門自身もまた「デスゴール」に目を奪われ、本質を見失ったのではないだろうか。プロの世界で勝ち続けられることは容易ではないが「勝者の遺伝子」とは歴史によって生まれ、「勢い」にはない深みのある勝利をあげることが出来る。それを持たされた“はず”の者たちのJ2降格は残念でならない。

 アジアにおいて「勝者の遺伝子」が刻まれている日本代表は16日にオランダ、20日にベルギーといった欧州列強と戦う。大量失点による連敗が一般的な見方だが、アジア王者の意地をみたい。

 このチームに降格はないが、選手の落選と監督の更迭はある。


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