底力

2013 年 11 月 9 日

 2011年、嶋基宏捕手は『絶対に見せましょう。東北の底力を』と日本製紙クリネックススタジアム宮城の大観衆の前で宣言した。

 あれから2年。

 リーグ制覇はあっても、日本一に無縁だった男がホームスタジアムで宙に舞った。熱い魂を前面にだすことで知られる野球人、星野仙一が日本一に輝いた。

 12球団で最も過酷な状況にあった“新参者”の東北楽天ゴールデンイーグルスは2005年の創設当初、首位と51ゲームは開いた。そのチームがたった9年間で日本一になれた要因は、意識改革だと星野監督はふり返っている。

 2011年から率いたその年を5位で終え、翌年4位だったチームに『底力を見せてないじゃないか』、『もっと勝負にこだわれ』と2年間言い続けたという。

 中日ドラゴンズ、阪神タイガースといった熱いファンを持つ球団を率いた過去から、ファンから野次のないチームを不憫(びん)に感じていた。

 8月下旬に5連敗し、2位の千葉ロッテマリーンズとのゲーム差を2.5ゲームまで縮められてしまう。

 その夜、いつものようにコーチと選手たちだけで行われていたミーティングの場に突如、監督が姿を表す。激しい叱責(しっせき)を覚悟していた選手たちに『人生には浮き沈みがある。それと一緒。お前ら良い経験をしている。自分たちの野球をやれよ』と、問いかけにも似た言葉を贈ったという。

 調子を落としていた選手たちにも長嶋茂雄氏や王貞治氏を例にあげ、『彼らでも落ちていた時期はあった。それでも愉しくやっていたよ』と諭(さと)した。

 そのミーティングを機にチームは息を吹き返し、その後リーグ優勝まで突き進んだ。

 投手陣の奮闘も光った。特筆すべきは田中将大投手にあり、得点圏にランナーを背負った時、通常146,6キロのストレートより2,6キロ上がる149,2キロを叩き出し、バッターをねじ伏せてきた。また、野球界の伝説として語り継がれている(故)稲尾和久投手の20連勝を超える24連勝を記録した田中将大投手なしに日本一は語れないだろう。

 アメリカ野球界ではボストン・レッドソックスが95年ぶりとなるホームスタジアムでの世界一を決めた。この名門もまた今年4月のテロ事件を機にチームが一つになった。

 彼らはファンたちに誓った「底力」を確かにみせた。東北を、ボストンを、背負って戦い栄冠に輝いた。

 今年8月、2011年以来となる東北開催でサッカー日本代表はウルグアイと戦い、2-4で完敗したのは記憶に新しい。

 『日本は戦ってない』。

 この言葉は、試合を欠場したDF長友佑都が元チームメイトFWディエゴ・フォルランからの助言だった。来たる欧州遠征2連戦。オランダ、ベルギーといった強豪にどう立ち向かうのか。

 気概(がい)を感じるサッカー日本代表を期待したい。


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