起因

2013 年 10 月 31 日

 サッカーというスポーツにミスがなければ、ここまでの熱狂は生まれなかっただろうし、歴史的な情緒も間違いなく生まれることはなかっただろう。

 UAEで開催されているFIFA U-17 W杯において若き日本代表は決勝トーナメント1回戦を戦い、スウェーデンに1-2で敗れベスト16で大会を去る。

 「96ジャパン」と呼ばれた彼らを率いた吉武博文監督は、かねてから「不可能」を前提とした上で、『ポゼッション率をできるだけ70%以上80%を取りたい』と話していた。選手たちもポゼッションサッカーを貫き、ボール支配率は大会を通して60%を下がることはなかった。

 スウェーデン戦では75%を記録し、不可能を可能にした試合だったが皮肉にもその試合がこのチームの“最後”となった。

 登録メンバー21人全ての選手を起用したのは育成と温情を感じさせ、決勝戦まで勝ち進むことを考慮してのローテーションだった。そこまでを見据えられる力はたしかにあった。A代表にない起用法ではあるが、きびしい言い方をすれば正GKは誰なのかを明確にする必要性があったのではないか。

 フィールドプレイヤー18人はユーティリティ性を含んだ人選だったが、3人のGKだけはまったくの別物である。実際、前半に許した2点目はGK白岡ティモシィによる試合勘の欠如にみえなくもなかった。

 2失点ともポゼッションサッカーの裏を突く、サイドに大きく蹴りこまれてからの展開であり、決勝点は顔を覆いたくなるほどのミスだった。

 白岡は190cm85kgの恵まれた体躯(く)を生かしたセービングで初戦のロシア撃破に大きく貢献する。大会を左右する初戦において、欧州1位に勝利した自信はグループリーグ3戦全勝という成績に多大な影響を与えたはずだ。

 2試合ぶりに先発した白岡だが、平均身長180cmを超えるスウェーデン相手に160cmの日本がハイボールから失点しなかったのは彼の貢献がなにより大きかった。白岡は自身のツイッターで、『昨日は自分のミスで負けてしまい、ベスト16という結果に終わりました』と悔しさをにじませる一方、『ここでの経験は宝物です』と気持ちを切り替えている。

 若さゆえのミスはある。しかし彼らがUAEで得た自信と経験は選手として何物にも代えがたい。そして彼らは2020年の東京五輪の主力として期待される世代なのだ。

 経験は生かしてこそ意味がある。

 スウェーデン戦が行われた28日は、ドーハの悲劇から20年目のその日だった。日本サッカー界もまた悲劇の経験を生かし、4年後にW杯出場を果たしている。

 ミスを忘れず、過去の栄光に溺(おぼ)れず、7年後にU-23日本代表として“東京”のピッチにこの中から何人が立っているのだろうか。そのことに注目するのも「96ジャパン」の楽しみ方の一つではないだろうか。


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