寿命

2013 年 9 月 28 日

 香川真司にとってマンチェスター・ユナイテッドでの2年目は煮え切らない。出場機会の少なさに首を傾げていたのはファンやメディアだけだったが、ついにチームOBまでもが異を唱えるようになった。

 この日本代表を獲得したのは前監督サー・アレックス・ファーガソンであり、現監督デイヴィッド・モイーズではない。

 前監督が『君は来シーズン絶対良くなる、確信している』と、香川に言い残したことを考えれば、リーグ戦出場「0」はシーズン序盤とはいえ、あまりにも寂しい。

 輝かしい過去をもっている前任者ならば、必然的に後継者は「いばらの道」を歩むものだが、サッカーにおいて前任者をしのぐ結果を残した後継者は数えられる。

 イングランドの名門リバプールFCの歴史は興味深い。

 名門の礎(いしずえ)を築いたビル・シャンクリーは強烈なリーダーシップで8年間も二部にいたチームを就任3年目にして優勝に導くと昇格した一部では2年目にしてリーグ制覇を成しとげる。

 チームにとって「初」となる世界最古のカップ戦・FA杯と国際タイトルUEFA杯(現・EL)をも獲得した名将は、2度目となるFA杯を獲得し勇退。その後、シャンクリーの右腕として活躍していたボブ・ペイズリーがチームを引き継ぐと9年間でFA杯こそ獲得できなかったがリーグ優勝6回、UEFA杯1回、欧州チャンピオンズカップ3回(現・CL)といったタイトルを残し勇退。

 この2人の名将によってチームは“欧州の名門”の仲間入りを果たす。ユニフォームのパンツの色も変わり、現在までつづく全身「赤」にしたのはシャンクリーの提言によるものだ。太い師弟関係で1959年から1983年まで長期的な強さを誇れたチームは見当たらない。

 だからこそ“ファーガソンのユナイテッド”は驚異的だ。

 1986年から2013年までたった一人でチームを率い、後任に選ばれたのが現監督モイーズである。このスコットランド人が2002年から2013年まで率いたエヴァートンで獲得したタイトルは「0」である。

 それでもチームは彼を選んだ。

 ユナイテッドには2つの黄金期があり、ファーガソン以前にはマット・バスビーが築いた。これからを任されたモイーズの3人は皆スコットランド人である事実は見逃せない。だからこそチームはモイーズに6年もの長期契約を用意した、とさえ囁(ささや)かれている。

 香川が試合に出ればチームが勝てる保証はないが、22日に行われたマンチェスターダービーでは交代枠を一つしか使わず1-4という大敗はあまりに無策だった。

 モイーズにとっても香川にとっても「試練の1年」であることは間違いないが、監督にとっての1年と選手にとっての1年は似て非なるものである。

 監督に比べ、選手の寿命とはあまりにも短いのだ。


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