躍如

2013 年 9 月 8 日

 キリンチャレンジカップ2013が大阪で開催され、3-0でグアテマラに完勝した。
 「試行錯誤」、「疑心暗鬼」、「特権階級」。グアテマラ戦を前にメディアにあったネガティブな四字熟語の一部である。火のないところに煙は立たないものだが、どれも当てはまってしまうのが現在の“ザックジャパン”だろう。

 そんな中に「原点回帰」というポジティブなものもあった。

 原点回帰の一つはFWからDFまでの距離をコンパクトにし、相手にボールが渡った瞬間から全員が守備に奔(ほん)走していた過去に戻る、というものだ。少なくともそれが出来ていたときにアジア王者になり、アルゼンチンにもフランスにも勝利した過去がこの日本代表にはある。

 『相手のレベルもありましたけど』。

 試合後、そう口にしたのは大量失点の矢面に立たされていた吉田麻也である。批判に晒(さら)されていた選手のみせた気迫と集中力は、たとえ相手が格下だったとしても高いものがあった。

 また、後半から投入された本田圭佑は先制点をたたき出し、“違い”をみせてくれた。同時投入された柿谷曜一朗も輝きを放ち、“旧友”香川真司とともに3人がみせた連携も回数を重ねていけば、可能性を十分に感じさせるものだった。

 だが、何とも惜しい場面もあった。

 柿谷がドリブルで60メートルを独走した場面だ。本田へのパスで終わった攻撃だったが、所属するチームではシュートを選択していたのではないだろうか。前半のみの出場となった大迫勇也も同様である。彼もまた香川にパスを選択してしまった。

 冒頭に四字熟語を並び立てたが、これからはその中に「手前勝手」があっても良いのではないだろうか。ゴール前で細かくボールをまわすのも悪いことではない。それだけの技術力は現在の日本代表にはあるが、より高みにいくには確実にシュートで終わることを意識しなければならないだろう。

 相手が格下だったから完勝できたのかもしれないが、格下相手でもボールを奪われた選手たちが責任感をもって全力で奪い返しに走る姿がみられたのは十分な「原点回帰」を感じさせた。

 10日に対戦するガーナは前回W杯ベスト8の実績と実力をもち、W杯出場を確実視されている強豪国である。この日にみせた清々しいほどの守備意識と高いボール保持力に、もし、シュートコースがあれば打つ積極性が出てくれば、より高みにいける可能性を秘めているはずだ。

 日本代表は今年に入ると停滞感、連敗、大量失点で評価を落とし、特権階級ゆえの「凋落」(ちょうらく)、とも囁(ささや)かれた。しかし、新戦力を招集し風向きは変わりつつある。

 “風”は良い方向に吹いているか。面目躍如(やくじょ)のためにも、証明しなければならない。


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