薫陶

2013 年 8 月 13 日

 10日のJ1では来たるウルグアイ戦を前に、新たに日本代表選手となった選手たちに注目があつまった。
 そういった“目”に晒(さら)されながらも期待にこたえた選手の活躍に、多くのファンが14日に行われる南米の強豪との対戦に胸をふくらませられた土曜日の夜だった。

 寝耳に水、とはこのことだろう。

 3月に開幕したJ1において、順位表の「1位」には珍しいチーム名があった。毎年のように驚異的な“粘り”で残留を決めていたオレンジ色のチームが一転、首位を堅守するチームに立場に変えていた。

 快進撃をつづける大宮アルディージャの試合には新たなファンも集まり、練習にも駆けつけるようになるとメディアの数も昨年の比ではなかった。11日、それらの立役者といっても過言ではなかったズデンコ・ベルデニック氏の監督解任が発表されたのだ。

 チームを率いていたスロベニア人は、母国で大学教授をつとめた過去をもつ監督なのはファンの間でもよく知られている。

 21戦連続無敗というJ1記録をも更新したチームは、6月のコンフェデ杯による中断を境にそれまでの勢いを失っていくと再開された7月には今季初となる連敗を喫する。日本の初優勝で幕を下ろした東アジアカップの中断後も3連敗。すると、その先に待っていたのは監督解任劇だった。

 5連敗の後の「解任」は見方によっては、傷を浅くとどめたように見られるが、それでも4位にいるチームの監督の解任はいかがなものだろうか。

 チームを運営するフロント側も決断が必要なのは言うまでもない。しかし、その決断はよく聞かれる「苦渋の決断」だったのだろうか。

 大宮は、労を惜しまないサッカーで新記録を樹立したチームでもあった。イビチャ・オシム氏の薫陶(くんとう)を受けた64歳の知将は試合運びも通ずるものがあった。攻めに転じたときに相手のペナルティエリアの中は1人や2人ではなく、多いときには5人もの選手が雪崩(なだ)れこむことも少なくなかった。

 記録自体を作れることは、たとえ「運」に助けられたとしても確かな実力に支えられていなければ作ることは困難である。

 Jリーグが1シーズン制になってから優勝チームをみると18勝以下のチームはない。2005年からJ1で戦う大宮は、昇格してから1年間で13勝が過去最高の勝利数だが、今季はここまでで11勝を挙げているのは見逃せない数字だ。

 解任までの経緯はいずれ明らかになっていくだろう。

 大宮の下した決断が、吉と出るか、凶と出るか、今はまだ知る由はない。ただ言えるのは、大宮が「サッカーを知る」有能な人財を失ったのは確かだ。また、今季の躍進でオレンジ色のユニフォームを購入して間もないファンたちを飽きさせないよう願うばかりである。


コメントをどうぞ