間違い

2010 年 8 月 10 日

どんなスポーツの世界にも『セーフティファースト』という言葉がある。
日本語に直訳すると、『安全第一』となる。
工事現場などで見慣れた四文字が何故スポーツの世界でも当てはまるのだろうか。

甲子園が始まり野球を見ていても1点与えても致し方無い、という場面がある。
つまりは、たとえ1点与えても大量得点を避ける、というプレー。
局面、局面で安全を選ぶ。
その継続性こそが試合に勝利する。という事が後の試合結果に繋がると私は考えている。

しかし、それは野球の話であってサッカーでは1点を与えれば致命傷になりかねない。
先日、清水エスパルスvs鹿島アントラーズの試合を観戦させて貰った。
アウェイの首位鹿島アントラーズは監督がベンチ入り停止ではあったが白熱した素晴らしい試合展開であったと思う。
試合は2-1で清水エスパルスが勝利したのだが、高い技術と高い戦術の応酬でファンを十二分に楽しませた事と思う。

私の持論なのだが「素晴らしい試合展開は素晴らしいゴールによって締め括られる」と私は信じている。
南アフリカワールドカップでも韓国vsウルグアイの決勝点となったルイス・スアレスのゴールなど最たる例である。
試合が素晴らしくとも、ミスから生まれる決勝点は非常に残念に思う。
ミスがない試合もなければ、ミスをしない人間もいない。

だが、防げるミスというものもある。

ホームランバッター相手にストレートのみで勝負するのは無謀なのは誰の目にも明らか。
出来るのは馬鹿か天才だけに思う。

安全ばかりを考えていれば試合に勝てる。かといえば、そんな事もない。
安全を考えた上でリスクを背負って勝負する。
リスクを背負って決断を下す。
その決断こそが弱き者が強き者を倒す。という事に繋がると私は考えている。
1996年、アトランタオリンピック、サッカー日本代表が起こした「マイアミの奇跡」という奇跡は攻められ続けた日本がブラジルの猛攻を耐えに耐え、リスクを背負って伊東輝悦が攻め上がらなければ奇跡は生まれなかった事と思う。
日本守備陣はゴール前では敵を背負ってなくとも、まずクリアを繰り返した。
大きくボールを蹴り出すクリアという行為は「アンチフットボール」と呼ばれる行為。
日本代表にとって、アンチと呼ばれようが何だろうが勝つ為には必要な手段である。
サッカーというスポーツは得点さえ許さなければ、試合に負ける事はない。
PK戦など運の勝負と私は考えている。

南アフリカワールドカップで優勝したスペインディフェンスの中心選手のカルレス・プジョルという選手がいた。
前回ワールドカップで優勝したイタリアディフェンスの中心選手ファビオ・カンナバーロを彷彿とさせるディフェンスをみせていた。
現在、日本人で両者に匹敵する程のディフェンダーはいない。
勿論、世界を見渡してもいるかいないかのレベルにある選手達である。

清水エスパルスと鹿島アントラーズの試合の決勝点は鹿島の選手がクリアしたボールが清水の選手に当たっての得点。
兵働昭弘のクロス、岡崎慎司の落とし、ゴール前に詰めていた枝村匠馬も褒めたいが、鹿島のディフェンダーは果たして、あの局面で相手ゴールに向かってクリアする必要があったのだろうか。
コーナーキックに逃げても良かったのではないのだろうか。

プジョルにしてもカンナバーロにしても相手ゴールを背にした状態で、あの様なクリアは決してしないであろう。
技術で肩を並べられなくとも、試合を決してしまう程の判断を誤っていては以前として世界は遠い。
Jリーグの首位攻防戦の決勝点が、セーフティファーストを忘れた形で生まれてしまった事実が私は実に悲しかった。

ある有能なサッカー界のレジェンドがこんな事を言っていた。
『サッカーは間違いのゲームだ。間違いの少ないチームが勝つ』
私も同感である。


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