循環

2013 年 6 月 5 日

 オーストラリアは苦しんでいる。
 当初、日本にとってグループ最大のライバルとされていた。ところが勝ち点を伸ばせないでいると、国内では「世代交代の失敗」が囁(ささや)かれ、オジェック監督は四面楚歌(そか)の状況にある。サッカー界では、ベテランとされる30代を越えている平均年齢も「失敗」の小さな証拠だろう。

 W杯アジア最終予選が行われ、同予選において0勝3分2敗と一度も勝ったことのないオーストラリアに1-1と引き分け、5大会連続となるW杯出場を決めた。これによってザッケローニ監督は最低限のノルマを達成した。

 チームはよく生き物だと言われている。

 どんな生き物も新陳代謝をくりかえし成長し、いずれ衰えていく。人間の場合、外部からの「新たな血」が循環した結果、良くも悪くも化学反応を起こす。順応できない場合もある。ザッケローニ監督はこれまで、極端なほど「新たな血」を好まない傾向にある。システムは試すが、選手を試すことがない事もこのイタリア人監督の「特徴」の一つでもある。

 「世代交代に失敗した」とされるオーストラリアは、一年前同予選での日本戦から11人中7人が先発し、比べて日本は11人中10人が同一メンバーだった。付け加えるなら先発を外れた吉田麻也が欠場した理由は、戦術的な理由ではなく怪我によるものだったことも監督の「特徴」をよく表している。数字だけをみるとどちらが失敗しているか分からない。

 W杯出場の切符を手にしたチームは、新たなスタートラインに立った。本大会までに残された時間は約1年間である。固定したメンバーで熟成させていくのもチーム作りの一つではある。しかし、2006年ほどの強さを感じないチームに多くの好機を作りながら勝ちきれなかったのは今後に一抹の不安を残す。

 試合終了間際にPKで追いついたことで、いわゆる「感動」を与えたとしても未来が明るいと言い切れないのが現状だろう。

 62,172人が詰めかけ、緊張感もあった。結果に対する重圧もあった。だからこそ終了のホイッスルが鳴り響いたとき、スタジアムが揺れるほどの爆発的歓喜があった。歓喜の中に「日本サッカー史上初のホームでのW杯出場決定」があったのは容易に想像できる。

 11日のイラク戦を終えるとW杯のプレ大会でもあるコンフェデレーションズ杯が15日から開催される。ブラジル、イタリア、メキシコから教わるものはチームの方針を揺るがすものになるかもしれない。それでも貫けるか否か、ザッケローニの力量が試される。

 この日も攻め手を欠いた時間帯があった。打開できる可能性をもった選手はJリーグの中にいる。確実にいる。ノルマを達成した現在、その可能性を試さずして放棄するのはあまりにも惜しい。


コメント / トラックバック 1 件

  1. 角谷 真 より:

    深いですね・・・これからも読ませてください

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