貫徹

2013 年 5 月 9 日

 そんな日はいつか来る。

 中村俊輔が所属した過去があるセルティックFCは、現在でも25番を背負った日本人を懐かしんでいるという。レンジャーズFCと二強状態がながらく続いたスコティッシュ・プレミアリーグにおいて、後者は財政破綻におちいり4部に降格し現在は一強状態にある。
 このリーグでは二強以外の優勝は数えられ、近年の連覇ともなる80年代のアバディーンFCが最後となる。連覇をなし遂げ、チームにとっての黄金期を築いた監督こそ、若き日の“ファギー”ことアレックス・ファーガソンであった。

 86年11月からマンチェスター・ユナイテッドの監督に就任。2000年にはチームでの功績が讃えられ、イングランドからナイト位を叙勲(じょくん)され、71歳になった「サー」は今季限りで監督業からの引退を表明した。

 そんな日が来たのだ。

 高校野球や高校サッカーの舞台で10年以上も監督を務めるケースは少なくない。しかし、勝利、育成といった多くの継続を求められるプロスポーツの世界で、10年以上チームを任せられるのは非常に稀(まれ)である。その倍以上の27年。四半世紀以上にわたりチームを任せられた。

 イングランドの盟主だったリバプールFCは70年、80年代の欧州をも席巻し、羨望の眼差しで見続けたのはファギーだけではなかった。

 90年までになし遂げた18回のリーグ制覇がそれを物語る。かたやユナイテッドは67年を最後に優勝から遠ざかっている古豪にすぎなかった。ファギーはこの時期からリバプールを超える19回の優勝を心に決めていたのだから、驚くべき信念の持ち主といえる。
 就任してから3年間はタイトルに恵まれなかったが、90年に国内カップを制するとこの優勝から黄金期が始まる。3年後には26年ぶりとなるリーグ制覇をなし遂げてしまう。

 リバプールは90年を最後にリーグ制覇から遠ざかっており、入れ替わるようにユナイテッドの時代となり欧州を2回、今季20回目のリーグ制覇をなし遂げた。

 若かれしファギーは『たとえ嫌われても信念に従って決断する、それが監督の仕事』と語り、晩年には『評価は自分の基準ですべきで他と比べて判断してはならない』と言った。信念を貫くこと、ブレるな、とも言った。

 信念を曲げることは自分を捨てること、と公言する男は50年と60年に一時代をつくったイングランドの名門をふたたび世界の強豪にしてみせた。

 サー・アレックス・ファーガソンは自身の信念を何より大切にし、貫き通した。任されたチームで必ず結果を出してきた。ユナイテッドだけでもタイトル数は38を超え、全てを含めると40を超える。

 1974年スコットランドで書きはじめた、おとぎ話のような数々の物語は2013年イングランドで書き終えようとしている。


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