遺産

2012 年 12 月 23 日

 1週間前の日曜日、2012クラブワールドカップは南米代表のブラジル・コリンチャンスの優勝で幕をおろした。

 個人技を生かした「華麗なブラジル」とはいえなかったが、組織的で、強固な守備は失点することなく大会を終える。南米代表を決めるコパ・リベルタドーレス決勝戦から、ほぼメンバーを変えずに大会に乗りこんできた継続性が実を結んだ。

 対する欧州代表のイングランド・チェルシーは欧州代表をきめるCL(チャンピオンズリーグ)決勝戦から、才能ゆたかな若手がチームに加わったが決定的な仕事ができる選手がチームから離れていた。

 チェルシーを「世界の強豪」にしたのは、石油取引業で巨万の富を得たロシア人オーナーのロマン・アブラモヴィッチと2004から2007までチームを率いたジョゼ・モウリーニョが挙げられるだろう。

 2003年、CL初制覇を果たしたばかりのポルトガル人監督をチームに招聘(しょうへい)し、就任1年目に50年ぶりとなるリーグ制覇をチームにもたらした。主要メンバーは若きの日のDFジョン・テリー、MFフランク・ランパード、このシーズンから新加入したGKペトル・チェフ、FWディディエ・ドログバがいた。

 約10年ちかい歳月をかけ、彼らは欧州王者になった。

 モウリーニョという希代の名将は、チェルシーというチームにすべてをもたらし、その遺産だけでも欧州で指折りのチームになり、のこした戦術、人材はチームを去っても色濃く生きつづけた。

 CL決勝戦で負けたときもあれば、現在のサッカー界を席巻しているFCバルセロナを対戦のたびに苦しめたのは、かれら以上に見あたらない。昨季は準決勝でバルセロナを倒し、決勝戦はドイツの盟主バイエルン・ミュンヘンをかれらのホームスタジアムで倒し、日本行きを決める。

 決勝戦は先制される展開だったが、同点ゴールを叩き込んだのはその後、有終の美を飾るようにチームを去るFWドログバだった。

 これまでチェルシーという名の家は、大黒柱が去っても屈強な4本の柱で支えつづけた。かれらもベテランの域に達し、世界一をかけた大会ではFWドログバという1本を移籍によって失い、DFテリーという1本を怪我によって失い、攻守の要MFランパードという1本も怪我明けの状態で、万全な1本はGKチェフのみで決勝戦に挑まなければならなかった。

 どのチームにも良い時期と悪い時期があり、進化しつづける強さはあってもその強さを維持することほど困難なものはない。選手は年齢をかさね、あらゆるスピードは必ず落ちてゆくからものだからだ。

 決勝戦の試合後、悲しみにくれる選手たちのなか、2本の柱であるランパードとチェフが肩をならべて少しながめに話しこんでいる光景は、一時代の終焉すら感じるものだった。


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