踏襲

2012 年 11 月 25 日

 黄金期にあったV(ヴェルディ)川崎のラモス瑠偉選手の放ったループシュートは、美しい軌道を描きゴールマウスに吸い込まれた。

 この場面を記憶されている方は多いが、その得点により敗れ、年間王者をのがした相手まで覚えている者は少ないものだ。Jリーグがまだ前期、後期があった1994年、前期王者だったサンフレッチェ広島は後期王者のV川崎にホーム、アウェーともに0-1で敗れた。

 今からおよそ20年前の話である。

 初の試みとなるJ1昇格プレーオフは、大分トリニータがジェフユナイテッド市原・千葉を1-0で下し、4年ぶりとなるJ1復帰を果たした。押し気味に試合を進めたジェフだったが1点が遠く、逆に大分は後半に次々とFWを投入したことが功を奏し、貴重な決勝点を導くものだった。

 引き分けでも昇格が決まるジェフだったが、先制点を入れ、逃げきる策もあった。このプレーオフを大分の“運”で片付けるつもりはないが、運を引き寄せるためにより攻撃的な策を投じた田坂和昭監督には来季から戦うJ1での舞台でも、この日みせた攻撃的なスタイルを貫いて頂きたい。

 その翌日、Jリーグ誕生から20年。その節目の年にして広島が初の“年間王者”に輝いた。

 現浦和レッズを率いるミハイロ・ペトロヴィッチ監督は、元日本代表イビチャ・オシム監督から多大な影響を受けた1人であり、2008年から11年まで広島を率いていたことは周知の事実である。

 今季からチームを任せられた森保一監督によって、前監督のやり方を踏襲(とうしゅう)しながら、より完成されたチームに変貌させる。攻撃面は昨季52点からリーグ2位の62点、守備陣もまた昨季の総失点49からリーグ3位の34と大幅にパワーアップさせた。

 4-1の大勝で優勝を決めた試合でも、オシムサッカーの代名詞でもあったサイドを複数の選手で崩す“労”を惜しまない攻撃、MF青山敏弘の2点目に象徴されるピッチを大きく使った攻撃は観るものを最後まで飽きさせないものだった。

 悲願のJリーグ制覇を成しとげた広島は来月、日本で開催されるCWC(クラブワールドカップ)に開催国枠で出場し、来季はアジアチャンピオンズリーグにも出場する。

 久しく日本勢がその座から遠ざかっているアジア王者になるためにもCWCの経験を“次”に繋げて頂きたい。目先の勝利ではない、来季に繋げられる戦い方を期待したい。

 オシム前監督はよく『考えて走るサッカー』また『日本人らしいサッカー』という言葉をよく用い、個に頼らない、日本人の俊敏性を生かした攻撃を期待した。

 昨今のJリーグ王者には決定的な仕事をする外国人選手が必ず存在した。だが、今季の広島は決定的な仕事をしているのが日本人選手なのだということは、頼もしい事実でもある。


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