決断

2012 年 10 月 2 日

 日本人にとっていいニュースもあれば、思わしくないニュースもある。

 フランクフルトに所属するMF乾貴士の勢いは止まらない。今季ドイツ一部に復帰したこのチームは、今季6節を終えた時点で5勝1分けと盟主バイエルン・ミュンヘンの全勝には及ばないが、昇格組ながら目をうたがう勢いでリーグを席巻している。

 乾自身も移籍1年目のチームながら、結果を残していることも十分評価できる。乾あってのフランクフルトとは思わないが3試合連続ゴールという事実もあり、牽引する1人である。
 GKのタイミングを巧みに外した得点、長所でもあったドリブルもより磨きがかかり、そこからの2得点はドイツに渡った2年間で才能の片鱗(へんりん)が顔を出しはじめた、と言っていいのではないか。

 清武弘嗣も今夏、移籍したニュルンベルクでは乾同様チームの顔として活躍を続けている。イングランドでも着々と結果を出しつづける香川真司もおり、このセレッソ大阪出身の3人を並べた布陣をセレッソのピンク色から日本代表の蒼いユニフォームでみてみたくもなる。

 一方で、日本代表の主将をつとめる長谷部誠の活躍が聞こえない。所属するヴォルフスブルクでは、ベンチ入りすら許されない状況がつづく。暗(あん)に「試合勘の欠如」だとか、心境、技術的な問題をいうつもりはない。

 選手にとって、試合に出ていなければそういった“雑音”は付き物でもあり、賞賛されるときもあれば、非難されるときはどの選手にもある。その苦境をどう乗りこえるか、が、一選手にとって技術以外の能力の差が露骨(ろこつ)にでる。

 昨今の「日本発ドイツ行き」の流れをつくったのは、長谷部の功績によるところが大きい。
 当時、監督をつとめていたフェリックス・マガトは選手の特性を見抜き、ドイツでも重要視されていなかったチームを見事に纏(まと)めあげる。クラブ創設以来、初となるリーグ制覇を成し遂げる。その中に長谷部はいた。

 ところが優勝翌年、マガトは他チームに活躍の場をうつす。ある種の奇跡を起こした主力たちも毎年のように引きぬかれ、チームは残留を争うほど低迷する。そんなチームの再起を託され、マガトは昨季より戻ってくる。
 長谷部を重宝し、ドイツを驚かせた監督がいだく“現在”は、皮肉な話ではあるが長谷部を必要としてはいないのかもしれない。だが、苦境に立たされた選手が挽回する術(すべ)は、その選手にしかできないのもまた事実である。

 10月6日に行われる第7節、出場機会に恵まれなかったとしても日本代表を率いるザッケローニ監督は、12日に行われるフランス戦においても長谷部に先発を言いわたすのだろうか。
 ならば、長谷部には価値を示してもらいたい。


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