酒蔵

2012 年 9 月 3 日

 「FCBOTIGA」

 このアルファベットの組み合わせをみて、分かる方は相当なバルサ好きを自負していい。バルサは「FCB」と略され、「BOTIGA」はスペイン語で酒蔵(さかぐら)を意味するのだそうだ。この、すこしオシャレな造語におおきな関心を覚えた。

 ワインの管理状況が悪いと、いくら素材のよいものでも、熟成された良い商品にはならないのは承知の事実である。何年もかけ大事に育てられ、環境に適応できたものだけが市場に出回り、中には天文学的な価格を叩きだすワインも世の中にはある。

 日本では残暑とよばれる9月初旬も、スペインではどうやら別のようである。ほんの少し前まで暑いくらいだったらしいが、8月末から雨にも見舞われ、夜の気温はずっと落ちたのだという。深夜に夏服で屋外にいると、耐えられないほどに冷え込むが、そんな中でも半そで半ズボンで酒を飲むスペイン人をみると、極東の人間と備わっているものの違いがよくわかる。

 バルセロナにあるサッカースタジアム・カンプノウでは、FCバルセロナのトップチームが試合を行い、バルセロナBとよばれる下部組織の青年たちの試合は、隣接する小さなスタジアムで行う。その場所は、現在のトップチームにいる選手たちのおおくがプレーしたその場所でもある。

 バルセロナBは、トップチームと比べれば当然ミスはおおい。だが、技術的には高く、チームとしてのやるべき方向性が浸透した素晴らしいチームでもあった。ひとつに大きく蹴りこまず、GKから丁寧にボールをつないでいた。よく名前が知られる選手の弟がプレーしていたり、現地の人に言わせれば『弟のほうが、才能がある』といったことも聞く。これから熟成を重ねるワインそのもので、深みはないが、ただ、うまい。

  カンプノウでみる、よく聞く“バルサ”は、昨年の冬に横浜でみた“バルサ”とはおおきく違っていた。特筆すべきは、審判へのファールの要求が凄まじい。指笛や、怒号が容赦なく襲いかかり、およそ10万人収容できるスタジアム全体からかけられる威圧は、ケタ違いに凄みがある。
 その場所でプレーする相手選手たちが、各国のリーグに移籍し、輝けるのが十分理解できる光景でもあった。

 相手選手が、リオネル・メッシに犯すファールへのブーイングは特に凄まじく、ワインでいう温度や日差しといった外敵から守るように、13歳で入団を果たし、世界一といわれる選手にまでなった彼を、我が子のようにファンは助ける。
 高額な治療代を支払ってでも、アルゼンチンからスペインの酒蔵に招き入れられたメッシの移籍にかかる違約金は1000億円を超える、といわれている。
 だが、彼にはその価値がある。
 世界でも例をみない酒蔵が、スペインのバルセロナにはある。


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