良薬

2012 年 7 月 12 日

 良薬とは苦いものである。
 7月11日、国立競技場に訪れたファンのおおくは本体会へ向け、安心と不安といった両極端をむねに抱いたはずだ。
 『もう、五輪は女子しか見ない』と吐き捨てるファンすらいた。

 この日、今月末に開幕するロンドン五輪の男女サッカーの壮行試合がおこなわれ、女子はオーストラリアに3-0と快勝、男子は格下であるニュージーランドに後半ロスタイムに追いつかれ、1-1の引き分け試合を演じ、決戦の地ロンドンに旅立つ。

 日本人のメンタリティを考えた場合、壮行試合というものにいささかの疑問を覚える。
 『格下相手に快勝し、きたる本大会に備えてもらおう』が根本にあったとしても、負け、引き分けだった場合、チームを窮地(きゅうち)に追いやり、逆効果をもたらす危険性を含んでいるからだ。

 思い出されるのは2006年W杯前、開催国ドイツに2-2の好ゲームを演出したチームが、次の格下マルタ戦、1-0と勝利はしたものの、内容も、後味も、悪い試合だった。そうした中でむかえたのが、本大会初戦オーストラリア戦だった。

 そうした過去をふりかえると、18日ベラルーシ戦、21日メキシコ戦といった強豪との対戦は本大会を見据えるうえでは絶好の相手といえる。
 「良薬口に苦し」とはよく言ったもので、試合を勝ちきる術は必要だが、ロスタイムのこわさを改めてしる良い機会となったはずである。

 後半ロスタイムの失点もなく、オーバーエイジ枠のDF徳永悠平に助けられた1点で、勝利をつかんでいたほうが、逆にこわかった。試合序盤から圧倒的に攻めながらも、ゴールすることが出来なかった攻撃陣に“喝”をいれたミドルシュートは、サプライズ選出とよばれるFW杉本健勇の足元に引き寄せられた、そんな1点だった。

 「世界で勝つためには」というフレーズを体現したような一発で、惜しい場面をいくら作っても、惜しいで終わり、杉本の1点がなければ惜敗で終わっていた壮行試合である。

 大学生時代には、ドイツのバイエルン、スペインのバレンシアといった強豪も注目した逸材は、2004年アテネ五輪での悔しさを8年越しにロンドンで果たそうとしている。世界との戦いをしる者が放ったミドルシュートは、この日一番のハイライトを作った。

 世界王者の女子に比べれば、チームとして未完成な部分を露呈(ろてい)したとしても、良かった点、悪かった点、を突きつめ、線にして18日に生かせばよい。その先に21日があり、26日の本大会初戦がある。

 女子に期待が集まり、たとえ男子に注目が集まらなかったとしても、このチームの発足時は、Jリーグからは邪険に扱われ、ファンからは期待されずに2010年広州アジア大会に挑み、優勝を果たしたチームである。
 私は期待している。


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