挫折

2012 年 7 月 9 日

 7月1日、スペインの連覇で幕を下ろした欧州選手権2012だったが、イタリアのFWマリオ・バロッテリは人目をはばからず、涙をながしていた。4-0という結果以上の差があったとしても、負けん気のつよさで知られる悪童FWの涙に、世界中のファンが驚かされた。

 イタリアを率いたプランデッリはバロッテリに対し『この結果を受け入れて、乗り越えていかないといけない』と告げたという。

 7月2日、ロンドン五輪をたたかうU-23日本代表および、予備登録メンバーが発表された。
 チームを率いる関塚隆監督とは、選手時代を共にした鹿島アントラーズのジョルジーニョ監督をはじめ、首を傾げている方も少なくない。監督が選んだ18名に対し、賛否両論はあったとしても、責任をとるのは文句を言う者ではなく、選手を信じて決めた関塚監督その人なのだから、個人的には監督の“やり方”を尊重したい。

 当選が確実視されていながらも落選したうちの一人、浦和レッズのFW原口元気が7月7日にみせた躍動は、今後の選手生活をかんがえた場合、たのもしい類のものだった。後半33分にピッチを退くまでの終始、気持ちがこもっていた。

 この日、大雨に見舞われた埼玉2〇〇2に駆けつけた両チームのファンが目にした、4-3という乱打戦は見応えがあったはずだ。試合を制した浦和の4点中、2得点を叩きこみ、計3得点に絡んだ原口は、紛れもなくこの日の主役だった。
 過去に審判の笛に対し、幼さをみせていた21歳ではあったが、「落選」という一つの挫折をまえに腐ることなく、チームが自身に求めた役割を完璧にちかい形で全うした。
 五輪に出場資格をもっていた23歳前後のサッカー選手にとって「落選」という試練は、齢(よわい)24を前にその人生で、はじめてとなる挫折として経験した選手もおおいだろう。

 原口は1点目をきめた直後、涙をながしていた。
 昨季、連敗していた際、不甲斐ないチームに対し涙をながすシーンがあったが、今回はちがっていた。これまで各年代の日本代表に選出されてきた逸材は、べつの悔しさを知ったのだろう。

 7月2日という日は、サッカー選手という職業を選んだおおくの若者にとって初めての挫折だったとしても“その日”をどう乗り越えるか、に今後の選手生活はおおきく変わっていくだろう。その職業をえらび、たとえそれが挫折だったとしても、“その日”から最初の仕事で結果をのこした原口がながした涙は、悔しさを強さにかえた瞬間であり、頼もしさすら覚えた。

 プランデッリ監督は泣きじゃくるFWバロッテリに『これまでもたくさんの選手が経験してきたことだ』と、さいごに諭したという。
 同じ21歳の若きサッカー選手がながした涙は、けっして無駄ではないはずだ。


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