寵愛

2012 年 6 月 30 日

 欧州選手権2012は準決勝を終え、スペインとイタリアが7月1日に欧州王座をかけ、相まみえることとなった。
 PK戦の末にイングランドに勝利したイタリアより、ギリシャを90分で倒し、公式戦15連勝という新記録を大会中に築きあげ、休養期間が2日多いドイツに有利な声がおおかったが、勝ったのはイタリアである。

 “スーパーマリオ”ことFWマリオ・バロテッリの2得点でドイツを退け、決勝戦にすすんだイタリアだが、イングランド戦で唯一PKを失敗した、MFリッカルド・モントリーヴォが先発に名を連ねたのには驚かされた。

 イングランド戦で120分をたたかった疲労、PKを失敗した精神状態を考慮するならば、同ポジションをこなせるMFチアゴ・モッタを起用することもできた。事実、両者は後半19分に交代している。
 イタリア代表を率いるチェザーレ・プランデッリが過去に、フィレンツェにあるチーム「フィオレンティーナ」を率いたことが、大きく関係していると考えても不思議ではない。

 90年初頭FWガブリエル・バティストゥータ、MFマヌエル・ルイコスタといった選手が織りなすプレーに魅せられたファンもおおいだろう。イタリア語でむらさきを意味するヴィオラと呼ばれ、愛されたチームにバティストゥータは選手生命のそのほとんどを捧げた。その後、チームは経営破綻という憂き目(うきめ)にあう。

 名門復活を託され、やってきたのがプランデッリである。イタリア全土に優秀な若手と知られていたモントリーヴォが、鳴り物入りでチームにやってきたのは、ちょうどその頃である。約5年間をともにした両者は以心伝心という関係にあった。タイトルには恵まれなかったものの、経営破綻後のチームに久しぶりの上位4位以内に与えられるCL(チャンピオンズリーグ)出場を果たす原動力になっている。

 かつての教え子は、プランデッリの寵愛(ちょうあい)にも似た、先発起用にみごと応えてみせる。前半36分、うつくしい弧(こ)を描いていたボールはバロッテリにおさまる。往年の名FWフィリッポ・インザーギをおもわせる飛び出しで、オフサイドラインをかい潜ると世界屈指のGKマヌエル・ノイアーと1対1の場面をつくる。

 追いかけてくるドイツDFよりも早く打ったシュートは、インザーギでは不可能なシュートスピードでゴールネットに突き刺さった。ノイアーが一歩も動けないシュートはなかなか見ることはないが、過去にインザーギもせおった背番号9はそれをやってのけた。

 迎える7月1日、世界王者スペインを倒せたのなら、イタリア代表にとって2つの歓喜が待っている。
 1つは言うまでもなく欧州王座という名誉、2つ目はチェザーレ・プランデッリにとって監督初タイトルである。


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