青年

2012 年 6 月 22 日

 90年代初頭、若きポルトガルはサッカー界を席巻していた。世界はかれらを「黄金世代」と呼び、賞賛した。
 ポルトガルでおこなわれた欧州選手権2004大会前、ポルトガルの優勝をおおくのサッカーファンが期待していた。黄金世代の中心にいたマヌエル・ルイコスタ、ルイス・フィーゴ、フェルナンド・コウトたちにとってのラストチャンスだったからだ。

 前者の3名以外の中心選手のほかに、一足先に引退した1人に名MFパウロ・ソウザがいた。あれから十余年、彼らはそういう世代になっていた。

 開幕戦で、打点のたかいヘディングシュートを決めた、すこし風変りな「つけ毛」をなびかせた青年は、母国でおこなわれた大舞台でチーム第1号となる得点をきめた。青年が決めたゴールに往年の選手たちはもちろん、国民を熱狂させた。

 青年の名はクリスティアーノ・ロナウド。

 デビッド・ベッカム以降、イングランドの名門マンチェスター・ユナイテッドの背番号7は、いまひとつだった。ベッカムがチームを去ってからはディエゴ・フォルランが背負うものの、何かが足りなかった。
 フォルランが去り、新たにその背番号をあたえられた若きポルトガル人が、大舞台で決めた瞬間、その選手がもつ潜在能力を世界がみとめた瞬間だったに違いない。

 その後、クラブでは「ユナイテッドの背番号7」が、なんたるかを示し続けるとジネディーヌ・ジダンの移籍金記録・約90億円をおおきく上回る、約130億円でレアル・マドリードに移籍する。

 永遠のライバル、FCバルセロナから4季ぶりにリーグタイトルを奪還し、望んだ欧州選手権2012のポルトガルは、2試合を終え1勝1敗だったものの、すっかりエースと呼ばれるようになっていたクリスティアーノは本来のそれから比べれば、最悪といってよかった。

 ルイコスタが去り、フィーゴが去り、デコが去ってから、チームを牽引しなければならない存在となっていたが、好機を生かせずチームに貢献できずにいた。
 大会無得点でむかえた最終節、強豪でありながら2連敗を喫し、決勝トーナメント行きの条件として、最低勝利で挑んできたオランダ相手に試合を決める2得点を叩きこみ、勝利すると、準々決勝チェコ戦でも決め、チームを準決勝に導く。

 8年前の開幕弾とは違い、からだを投げ出してのヘディングシュートは世界屈指のGKペトル・チェフをもってしても止めることはできなかった。

 黄金世代から国際タイトルには、まったく縁がなかったポルトガル。だが今大会、かつてほどの美しさはなくなってしまったが、それでも勝利してきた。あの頃には絶対的なFWがいなかったが、現在はいる。
 泥臭くとも、貪欲にゴールを狙えるエースがいる。その差はあまりにも大きい。


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